忘れもの

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卵を取り出してドアを閉める直前、無意識のうちに冷蔵庫のドアの内側の棚に並ぶ調味料類の中から、ある小瓶を探してしまっていた。 そして自分のとったその無意識の行動に気づいて、苦笑い。 ---こんなことでまた美優を思い出すなんて…。 僕はその小瓶、美優の買ってきた、美優の出身地名産の柚子胡椒の小瓶を手に、もはや笑うしかなかった。 ------ 遅く起きた休日の朝。 同棲を始めたばかりの二人。 美優よりさらに寝坊した僕がダイニングに行くと、食事当番の美優が、湯気の立ち昇る炊きたてご飯と、中鉢に盛った赤い卵をテーブルに並べている最中だった。 「はい、裕也(ゆうや)の分のご飯と、卵。 醤油、ポン酢、麺つゆにごま油。薬味もネギに削り節、他にも何種類か用意してるから、好きなのを掛けて食べてね」 「えーっ、卵かけご飯には醤油一択でしょ?」 「裕也、それ、人生かなり損してるよ。 卵かけご飯って、一見簡単なようで奥が深いんだから。 ちなみにウチの実家じゃ、柚子胡椒と麺つゆがデフォ。この組み合わせが意外と美味しいんだよ」 僕は美優お勧めの柚子胡椒と麺つゆを卵に掛け、恐る恐る口に運んでみた。 「…っん!意外とイケるじゃん」 「でしょ?」 美優は僕に向かってドヤ顔で笑ってみせた。
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