紫色のたまご

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「いいですか。二度と黄色い線の外側に出てはいけませんよ」  一ヶ月後にまたお会いしましょう、そう言って男性は俺の手の上に紫色のたまごを乗せたまま、ホームに停まっていた電車に乗っていってしまった。 ◆◇◆◇  さっきはなんとなく流されるように納得してしまったけれど、こんな紫色のたまごにそんなSFみたいな力があるのか? そもそもこれは何のたまごなんだ? いや、本当にたまごなのかどうなのかも怪しいじゃないか。  仕事に戻る気にもなれず、そのまま早退をした。アパートのテーブルの上に紫色のたまごを置いて、今日あったことを思い返していた。思い返せば返すほど胡散臭さが表立ってくる。詐欺か宗教関係か、はたまた一般人を相手にしたドッキリなのか。あ━、イライラする。せっかくストレスが無くなったと思ったのに。 「くそ、なんなんだよ、あいつは。こんな訳わからないものよこしやがって。俺をバカにしてんのか」  そう叫んだ時、目の前にあった紫色のたまごが淡く輝き始めた。  次の瞬間、さっきまで燻っていたストレスが一気に晴れていくように感じた。して、淡く輝いていた紫色のたまごはその輝きを失い、元の紫色のたまごに戻っていた。  本物だ。これは詐欺や宗教でも、ましてやドッキリでもない。これは間違いなくストレスを吸い取る奇跡のたまごだ。俺はスーパーアイテムを手に入れたんだ。 ◇◆◇◆ 「バカヤロー、お前はまた契約逃したのか。契約取れるまで帰ってくるんじゃねえ」 「すいません、今からもう一度先方に出向いてきます。絶対に契約取ってきますので」
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