いびつなたまご

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【別れよう】  ビルの前で雨をよけながら、暗闇に光るその文字を読んだ。 【わかった】  画面に指を滑らせてから、ポケットにスマホを突っ込む。  悲しくはなかった。寂しくもなかった。  ただ彼に申し訳なくて、心の中で何度も繰り返す。  ごめんね。ごめんね。ごめんなさい。  今度こそできると思ったんだ。私も恋をすることが、できると思ったんだ。  でもできなかった。私はやっぱり、どこかおかしい。  深く息を吐き、暗くなった空を見上げる。雨はしとしとと降り続いている。  傘は持っていない。  いつも家まで送ってくれた彼氏も、もういない。 「どうしよう……」  頭に浮かんだのは、見慣れたあの顔。  少し考えてから、スマホを取り出した。  画面の上で素早く指を動かし、メッセージを送信する。 【傘忘れたから、迎えにきて】  じっと画面を見つめていると、すぐに既読の文字がつき、返信がきた。 【どこにいるの?】 【塾の前】 【すぐ行く】  スマホをポケットに押し込んで、空を見上げる。  街のネオンに照らされて、雨粒がキラキラ光っていた。
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