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「ちょっと待っててね!飲み物でも飲んでて」
先程、量販店で購入した熊さんがプリントされたエプロンを後ろ手にきゅ、と締め、半袖なのに、腕まくりするフリしてる。
意外や意外、熊さんのエプロンが似合う。
裸にエプロンよりいいかも。
次第に部屋からいい匂い...。
なに作ってるか気になるが...俺はたまに鼻歌を歌いながら料理してる蓮の後ろ姿をたまに見ながら本を読み、たまにコーヒーを啜る。
1時間ちょっとくらい経った頃、
「出来たよー!運ぶねー!」
と、威勢のいい声がした。
鯖の味噌煮、油揚げと小松菜の煮浸し、冷奴、油揚げ、ネギ、わかめの味噌汁。
ついでに白ご飯。
「すっげ。美味そう」
エヘ、と蓮が照れ臭そうに笑った。
「味はわかんないけど」
向かい合い、いただきます、と、鯖の味噌煮に箸を入れた。
生姜が効いていて臭みもなく、美味かった。
「どう?」
蓮は箸を付けずに俺の反応を伺ってる。
「や、美味いな。久々に食ったけど、魚」
煮浸しも美味かった。
「ホント?良かったー!」
じ、と目を真ん丸にし、口元に弧を描き、俺を見つめていたが、ホッとしたのか、蓮も箸を手にし、食べ始めた。
「他、なに作れるの?」
「他?んー、なんだろ」
「家政夫にしてーな」
蓮が味噌汁を吹いた。
「冗談だよ。蓮も大学あるしな」
「ま、まあ、そうだけど...」
肩を竦め、丁寧に鯖の身を解してる。
「なに?そうだけど、て」
「ふ、深い意味はないよ、嬉しいなあ、て、思っただけ」
パク、と解した身を頬張った。
「てか、あの男...元彼から連絡来てんのに無視してんの?」
喉に詰まらせたのか、ケホケホ言い出した。
「大丈夫かよ、ほら、水」
「あ、ありがと...」
一息ついてから、
「どうしたらいいか...分かんなくって...」
ちら、と蓮が上目遣い気味に俺を見たが、すぐに視線を外し、料理に移る。
「....好きかも、て人...出来て...」
....好きな人....。
頭を金津ちで殴られた感覚だった。
....ゲイじゃないのに。なんでショック、受けてんの、俺。
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