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「...えっと、あの、その...」
蓮は伏し目がちに忙しなく両手の指を絡み合わせ、その指を瞬きもせず眺めながら語りだした。
「その、え、エクアドルの人に、ね。毎日、ごはん、作る、よ。ほら、男を捕まえるにはまず胃袋から、て話し...」
「...は?お前、なに言ってんの?海外まで行って家政夫かよ」
「で、でも。好きな人の為なら苦じゃない、ていうか...」
「...そんなに好きなんだな。そのエクアドルの男」
こくん、と顔、真っ赤にして頷いて、そんなに好き、てことだよな...。
「...わかった。頑張れよ、応援する」
えっ!と唐突に蓮は伏せていた顔を上げた。
「な、なんで!?」
「なんで、て、そこまで蓮が好きなのに俺がうだうだ言う訳にはいかないし」
暫しの間の後。
「鈍感!」
「ど、鈍感...?誰が」
いきなり叫ばれて唖然となった。
「孝介の鈍感!ヤリチン!わからずや!おたんこなす!」
「や、ヤリチン、て...なにがしたいの、蓮」
ぶわ、と蓮の瞳に涙が溢れた。
「僕が好きなのは!まるでエクアドルに住んでそうなノンケの孝介だから!」
「え?俺...?」
涙を浮かべてはいるものの強気な眼差しを向けたまま蓮は頷いた。
「なんでまたエクアドル?日本在住だっての」
思わず苦笑し、蓮を優しく抱き締めた。
「わからずや!嘘!めっちゃ優しい!嫌んなる!」
「嫌んなるの?」
蓮との出会いを思い出し、思わず笑うしかない。
なんか、愛嬌があって、怒ったり笑ったり、感情が豊かすぎるし、忙しない奴なんだよな。
でもって、人情味があって友達思い、子供好きで世話焼き。
「うん!めっちゃ嫌んなる!知れば知るほど!好きになるから嫌んなる!」
「...わかる。俺も似た感じ。ゲイじゃないってのに、懐かれてどうしたもんかと思ってたら、まんまと気持ち奪われてた。引越して来い。蓮」
一瞬、気の抜けるような間があった。
「....今なんて....?」
「だから。料理、頑張ってくれるんだろ?俺、料理や家事、苦手だし。なにより蓮の手料理、もっと食べたい、いや、もう他の男には食わせたくない」
俺の腕の中で顔を上げた蓮だが、相変わらず真っ赤な顔して、頬を膨らませている。
「...なに怒ってんだよ、蓮」
笑いながら言うと、
「怒ってません!嬉しいだけです!」
口を尖らせ、怒り口調で答えたが、単なる照れ臭さからだろう。
尖らせた唇にツン、とバードキスで唇を合わせてやった。
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