天ぷらパーティー?

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天ぷらパーティー?

明日は互いに大学はなく、蓮もバイトが休みということで、昼前からは口座を作りに銀行へ、その後は食器を選びに行くことになった。 蓮が提案した、余った食費などを預ける為の二人の口座。 これまた蓮の提案で、そこから必要な家電や家具だったり欲しいものを買うなり旅行に使うなりしよう、と決まった。 蓮はさぞかし嬉しそうで、エプロンを付けて陽気に鼻歌を歌いながらキッチンに立っている。 そして、晩ごはん。 「はーい!ちゅうもーく!今日は明日のデートを祝してー、天ぷらパーティーだよー!はーい、みんな拍手ー!」 二皿ぶんの山盛りの天ぷらが揚げ終わり、蓮が満面の笑顔で拍手...。 ...みんな、て俺とお前しかいないけど? しかも、天ぷらパーティー、てなんだ? ...蓮の実家に迷い込んだ気分。 母親のノリを受け継いだんだろうな、多分。 「ほら!そこ!孝介、拍手は!?おじいちゃんが我が子のように手塩にかけて育てたお野菜たちだよー!」 ...遅ればせながら、拍手。真顔だけど。 めっちゃ笑顔の蓮と拍手してる俺。 ...おじいちゃんの我が子、てどんなんだよ。 「でも、美味そうだな」 「でも、がよくわからないけど。お野菜、お世辞やおべっかじゃなく新鮮で美味しいと思うよ? はい、大根おろしと生姜は自由につゆに使ってねー」 「生姜だけにしょうがないな」 「さ!いただきまーす!」 「無視かよ」 とりあえず、殆どペアの蓮が持ってきた食器は、ほぼ全て埋め立て用のゴミ袋に詰め込んだ。 「え、嘘。お箸まで...?」 頑張って百均で揃えたらしいペアの箸の山もビニールに入れたが。 蓮は随分、名残惜しそうにわかりやすく凹んでいた。 「...逆の立場、考えてみ?」 「...逆、て?」 「そう。例えば。うちにさ、ちゃんと食器があるとする。お前みたくペアの茶碗にマグカップ、箸やら色々。お前は平気で喜んで使えるか?」 蓮が丸い目で見つめてきた。 「....え?やだ!無理無理無理!元カノさんが買ってきて、そして使ってた茶碗や箸とか気持ち悪い!」 「だろ?そういうこと」 「...そっか、そういうことかー」 「ようやくわかったか」 「うん!教えてくれてありがと、孝介!」 「わかったならいいよ」 互いに顔を見合せて微笑んで解決した。 にしても。 「....や、ば。美味いな、マジで」 「でしょ!?実家からいーっぱい野菜が届いたし、助かるー!しばらくは野菜に困らない!」 サク、と蓮が天ぷらに齧り付いた。 茄子に玉ねぎ、ピーマンに人参、かぼちゃに蓮根、大葉、さつまいも、海老に白身魚の盛りだくさんの蓮お手製、揚げたての天ぷら。 大根おろしの大根もおじいちゃんの畑で収穫したものらしい。 味噌汁は豆腐とわかめ、葱に油揚げ。 わかめやひじき、海苔だとかの乾物はお父さんの勤める会社が卸業者をやってるとかでダンボールに入ってた。 海老や白身魚は購入したものらしいけど。 「海老もお魚もスーパーで安かったからね、お魚は3割引のシール貼ってたときに買って冷凍保存してたからー、二人で約千円いかないくらい!」 「これで、1人、約500円!?」 このボリュームと美味さでか。 衣が薄くサクサクで本当に美味い。 つゆも手作りらしいが大根おろしと生姜を少し入れたら本当にまた格別の美味さ。 「あ、ご飯とお味噌汁、お代わりはー?」 「あ、ごめん、サンキュ」 「どういたしまして♪」 ふんふん、と鼻歌歌いながら、立ち上がり、キッチンへと向かう蓮。 もしかしたら食器が大荷物になりかねないし、夕飯は実家から届いた野菜を使いたい、とのことで、その後は特に何処に行く訳でもなく、帰宅したらゆっくりする予定だ。
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