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2回目以降の食事は、それはそれは美味しかった。
中でも美味しかったのは、部屋の窓から見える雲と同じふわふわの白い砂糖菓子。綿菓子、という名前の食べ物が気に入った私は、悲しい気持ちになるたびに注文していた。色もたくさん手に入れられるとのことで、桃色、黄色、緑色……とたくさんの色があった。多分、全種類食べていたと思う。とくにお気に入りの色は水色だったのだけれど「思い出されては困るから」と言われてからは食べさせてもらえなかった。その日から少しずつ周りの目が厳しくなり、そして。
一週間に一度、卵の殻を食べるよう言われた。
そうすれば、私は翌日卵を産む体質だったから。
卵を産む時は苦痛だった。卵の殻を食べる瞬間、私は心臓をえぐられるような痛さに必ず泣いた。でも、それさえ我慢すれば、私は贅沢と言っていい生活を送れた。その意味がわかったのは、暇にならないようにと貰った本の物語を読んだことによりつけた知識だった。
産んだ卵は私の世話をする人に渡す。
そして卵は――私が一週間後に食べるための殻となって戻ってくる。
「立派な人魚を生むために頑張ってください」
そう言って一緒に出される食事が肉だけになった時、最初は何も考えずに食べていた私だったけど、人を食べる魔王を倒す勇者のお話を読んでからこれは何のお肉なのか考えてしまうようになった。
香ばしくて、美味しい、けど
生臭い香りのする卵の殻と同じ匂いがするのが、気のせいじゃない気がしてならない。
私は、段々と食事をしなくなっていった。
それじゃあまずい、とあの人たちは思ったのだろう。
「これが最後です」
その言葉と共に複数の手に布団に押さえつけられた私の口にねじ込まれたのは、卵の殻がついた鱗。
何の鱗で。
何の殻か。
わからない私ではなかった。
だけど、抵抗しても意味がないとも、わかっていた。
最初の食事よりも喉や、歯や、舌が、苦しい食事だった。
噛みたいのに、噛めない固さで。
飲み込みたいけど、飲み込もうとしても喉にまでは入れない大きさで。
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