人魚の卵

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 奇跡的に捕まえられた唯一無二の人魚。それを守る一族として神のように崇め奉られていたのに、人魚がいないとなれば終わってしまう。儂の貴族としての地位がなくなってしまう。こんなことならば、気色悪い黄色がかった卵から出てきた人魚を食わずにいればよかった。生かしておけばこんなことにはならなかったのに。  もう今後一切あの高級肉を食べれないとなれば、あらゆる貴族が私を糾弾し、地位から引きずり降ろそうと狙ってくるだろう。 「いや、まだだ、まだ、儂は」  なんとしてでもあの人魚を捕まえてやる。  儂は屋敷内にいる使用人共に命令した。  儂の命令に逆らえない奴隷や貴族にも怒鳴り散らした。  なんとしても人魚を見つけ出せ。  儂の人魚をここにつれてこい。  そして鎖につないで痛めつけて二度と逆らえないようにするのだ。 「本体が見つからなくても卵でもいい。卵さえ、卵さえあれば!」  屋敷の中でじっとしていられない儂は砂浜を血眼になって探した。  見つけられなければ死よりも残酷な未来しか待っておらぬのだから。 「城主様!卵を発見しました!」  若い男の貴族が声を張り上げた。  ああ、あれはバカ貴族のバカ息子だ。  金さえ払えば儂に忠誠を誓う金の亡者。  そいつが手柄をたてたのは気に食わないが、背に腹は代えられぬ。  一週間も何も見つからなかったのだ。  藁にもすがる思いで儂は男に大股で歩み寄った。 「見せろ!!」  男から奪い取り卵を観察した。  空色の卵。  ベッドに残されていたものと同じ色。  やはりあれは卵の殻だったのか。  なんと見事な澄んだ色か。  これは殻だけでも高く売れそうだ。  そうと決まればこれを手に入れるに決まっている。  掌にちょこんと乗る程度のサイズだが構わん。  間違いない、これは人魚の卵だ。  小さくても、また育てればいいだけだ。 「これは儂のだぁ!儂が見つけたんだ!ハハハ!ハハハハハ!」  横で「いや」「それは」「おれが」とバカな男がのたまっているが無視だ。
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