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儂が見つけたと主張すればいい。なんせ人魚の卵を手に入れたのだから、儂の地位はもう守られたも当然なのだ。
「キシャァ!」
なんだ、まだ文句があるのか。
……いや、違う
今の声は、儂の足下からだ。
ちくりと、痛む。
なんだ。
つま先が、あつい
「ギジャア!」
足下を見れば。
牙の、生えた、
手足の、生えた、魚が、儂の、足を、かじって、歯が、真っ赤で
「ああああ!痛い、いたいっ、ば、ばけもの! くそ、誰か!誰かコイツを始末し――」
急いで叫ぶが痛みでバランスを崩し勢いよく尻餅をついてしまった。卵を守るために両手を掲げるようにこけてしまった。尻が痛い。だが、卵は無事だ。でも、なら、
尻の下でぐしゃりといったのはなんだ
見れば、尻の下には、先ほどと同じ卵が粉々になった姿があった。
その中心で、苦しそうに、痛そうに全身をくねらせる生物。
まさか、と砂を手で払った。
卵がたくさんある。
やった、これで儂の人生は安泰――
「は?」
待て。
何故、隣にまだある。
いや、周り全部が卵か。
近くの砂をさらに払えば、また卵が。
無数の空色の卵が出てき続ける。
まさか、砂の下は全てこの卵では――?
いやな考えが過った瞬間、無数の場所から砂が盛り上がる。
キシャァ、という鳴き声が聞こえる。
悲鳴が上がる。
近くにいたバカ男の絶叫が響く。
儂の手も熱い。
膝が、太ももが、熱い、痛い、噛まれた、血が、流れ、いや、血を
飲まれる――
「あああああああああああああああ!」
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