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「痛……」
光の入らない部屋の中。私の呟いた言葉は綺麗に清掃されたつるっとした茶色い床に落ちて転がる。そんな幻覚めいた感覚を感じながら、私はずっと抱えていたものに添えていた手に僅かな力を込めた。力を入れすぎると割れてしまうから、ほんのわずかだけ、だ。
体勢を変えようとして身を捩ったが、やるべきではなかったようだ。手入れされたふかふかで柔らかい白い布団の上にいるから平気に感じただけで、私の身体は下半身を少しも動かせない程ボロボロになっているようだ。唯一動かせるのは腕や手指、首……程度のようだ。お尻や膝、お腹に力を入れるような動きは何一つ出来ず、1ミリでも動かせばまた私は同じセリフを呟いてしまう事だろう。
そっとため息を吐くことさえも、苦しい。
痛くないように細く息を吸って、細く吐きながら目を閉じる。
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