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突然、背後から声がして振り返る。そこにはクラスメートの一人である黒沢が立っていた。
「助けないの?」
状況を素早く理解したらしい彼がそう訊ねて来る。助けられるものなら助けてあげたい。
だけど……。
「か、身体が動かなくって……」
「ふぅん?」
呆れられただろうか?そんな思いとは裏腹に、彼はにやりと笑うと男たちの方へと歩いて行った。
「なんだてめぇ!?」
凄む少年たちに怯むことなく、黒沢はスマホをチラつかせ、言った。
「いいの? もうすぐ警察が来ると思うけど。君たちの証拠写真もばっちり撮らせてもらったから」
え!? いつの間に!? 物陰から覗いていた真央も驚愕する。
「な……ッ!?」
「チッ、覚えとけよクソッ垂れ!」
舌打ちしながら去って行く少年たちを見送ると、黒沢はこちらを振り向いた。
「嘘も方便ってね。単純な奴らでよかったよ」
そう言いながら悪戯っぽく笑う彼を純粋に凄いと思った。
それに比べて自分はなんて情けないんだろう。
鮮やかな手際に呆気に取られていた真央だったが、ハッとして慌てて少女の元へと駆け寄った。
くりっとした大きな瞳にふっくらとした頬。幼いながらも整った目鼻立ちはまるで日本人形のように愛らしく、ぞっとするほど綺麗だと思った。
「だ、大丈夫?」
「うむ。問題ない」
年の割には可笑しな話し方をする子供だ。カラスの濡れ羽のような長い髪を揺らし、少女はゆっくりと立ち上がると乱れた着物を整えた。
この子は一体――。
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