不思議な縁

2/10
12人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
突然、背後から声がして振り返る。そこにはクラスメートの一人である黒沢が立っていた。 「助けないの?」 状況を素早く理解したらしい彼がそう訊ねて来る。助けられるものなら助けてあげたい。 だけど……。 「か、身体が動かなくって……」 「ふぅん?」 呆れられただろうか?そんな思いとは裏腹に、彼はにやりと笑うと男たちの方へと歩いて行った。 「なんだてめぇ!?」 凄む少年たちに怯むことなく、黒沢はスマホをチラつかせ、言った。 「いいの? もうすぐ警察が来ると思うけど。君たちの証拠写真もばっちり撮らせてもらったから」 え!? いつの間に!? 物陰から覗いていた真央も驚愕する。 「な……ッ!?」 「チッ、覚えとけよクソッ垂れ!」 舌打ちしながら去って行く少年たちを見送ると、黒沢はこちらを振り向いた。 「嘘も方便ってね。単純な奴らでよかったよ」 そう言いながら悪戯っぽく笑う彼を純粋に凄いと思った。 それに比べて自分はなんて情けないんだろう。 鮮やかな手際に呆気に取られていた真央だったが、ハッとして慌てて少女の元へと駆け寄った。 くりっとした大きな瞳にふっくらとした頬。幼いながらも整った目鼻立ちはまるで日本人形のように愛らしく、ぞっとするほど綺麗だと思った。 「だ、大丈夫?」 「うむ。問題ない」 年の割には可笑しな話し方をする子供だ。カラスの濡れ羽のような長い髪を揺らし、少女はゆっくりと立ち上がると乱れた着物を整えた。 この子は一体――。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!