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「なぁ、アリス。お前今日の英語やって来たか?」
「えっ、あぁ、うん一応」
「ラッキー。ちょっと写させてくれ」
その位自分でやって来なよ。と言いたかったけど、黙ってノートを差し出す。
「サンキュ。やっぱ持つべきものはアリスちゃんだな」
自分は有栖川で、アリスではない。いやだ嫌だと思いつつ、言い返せない自分が憎い。
「そういやアリスって黒沢と最近仲いいよな? なんで?」
「えっ!? そ、そう……かな?」
南は何故か黒沢を嫌っている事は知っている。この場合、どう答えるのが正解なのだろう?
考えてもわからなくて曖昧に笑って誤魔化そうとしていると、登校して来た他のメンバーたちがわらわらと二人を取り囲むように集まって来た。
「はよー。なぁなぁ、黒沢って男が好きらしいよ。同中の奴がそう言ってた」
唐突に聞こえてきた言葉に思考回路が停止する。今、なんて……? 聞き間違いだろうか?
「それマジ!? やっべ気持ち悪い」
「ちょっと顔がいいからってそれは無いわー」
頭の中でガンガンと音が鳴り響く。耳を塞ぎたいのに身体が動かない。
「なぁ、アリスもそう思うだろう?」
「ぅえっ!? あ、あぁ、うん……そう、だね」
言ってしまった瞬間、登校して来た黒沢と目が合って、激しい後悔に襲われた。
どうしよう、聞かれてしまった。そんな事を言うつもりは無かったのに……。
真央が言葉を発した瞬間、彼は明らかに動揺していたし傷ついた顔をしていた。
あんな顔、させたいわけじゃなかったのに。隙を見て、彼に謝ろう。そう思っていたのに今日に限ってタイミングが合わない。
放課後になってもそれは変わらなくて、一言も話が出来ないまま気が付けば彼の姿は無くなっていた。
「僕の馬鹿……」
真央は深い溜息をつくと一人呟く。黒沢を傷つけてしまった事が辛い。そして、自分に対する嫌悪感で吐きそうだった。
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