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「えっ、あ、あれ!? 今朝まで此処にちゃんと置いてあったのに!」
他愛もない話をしながら部屋に戻ると、卵はいなかった。 代わりに、いつも置いていた場所には、割れた殻が散乱している。
「孵ってる……! 中に居たのは何処に!?」
勝手に可愛い生き物だといいなと思っていたが、エイリアンみたいな生き物が部屋に潜んでいたらどうしよう。急に不安が押し寄せて来る。
二人で部屋のあちこちを探していると何処からともなく甲高い鳴き声が聞こえてきた。それと同時にポフンとなにか生暖かいものが頭の上に降りてくる。
「んッ!?」
「ぶふっ、おまっ、それ……っ」
真央の頭上を見て、黒沢が吹き出す。一体何が乗っているのかと頭上に手を置いてそれを捕まえてみる。
「こ、これは――」
黒っぽい毛並みにずんぐりむっくりとした寸胴体型。手足は短くロップイヤーのような長い耳のようなものが付いている。
小ぢんまりとしたくちばしが何とも愛らしいペンギンとウサギの合いの子みたいな生き物がそこにいた。
「え、なにこれ!? 可愛い――って、えっ、ちょ……コレが、僕の心の化身……?」
「フハッ、ちょっと期待したんだけどなぁドラゴンみたいなカッコいいヤツ」
ピーピーと小さな鳴き声を上げながら、トコトコと歩く姿はまさにマスコットのようで自然に笑みが浮かんでくる。
「いや、でもなんかこの子すげぇ癒されるわ。ずっと見てても飽きなさそう」
黒沢が指先で頭を撫でると、気持ち良さそうに目を細めてすり寄ってくる。
(可愛い……)
二人同時に同じことを考えていたようで、互いに目が合い、思わず笑ってしまった。
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