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「たかしさん、起きて〜」
私はいつもの時間にいつものように夫に声をかける。
「朝ご飯、出来てるわよ〜」
テーブルの上には目玉焼き、お漬物、味噌汁。
そして大ぶりのお茶碗にたっぷりよそった白い御飯。
…え?おかずが少ないのでは、って?
夫は目玉焼きが大好きだ。
黄身に少しだけ緩さを残した堅焼きが好み。
それをご飯の上にドーンと乗せる。
それがあれば、他におかずはいらないのだそうだ。
きれいに焼けても
あっという間に醤油がかけられて
一気に混ぜこまれてしまう。
じゃあ卵かけ御飯でよくない?
一度夫にそう聞いたことがある。
「焼いた卵が好きなんだよ、ヨシエ」
そういう時だけ、夫は私の名前を呼ぶ。
いつもは「おい」とか、「かあさん」とかなのに。
「今日の目玉焼きはホントにうまく焼けたわ…」
こういう時、写真を撮ればいいのかしら?
ああ…携帯のカメラの使い方、絵里に聞いておけば
良かった…。
ここから少し離れた所にお嫁に行ったひとり娘に
後で電話して聞いてみよう。
「そろそろ起きないと遅れますよ〜」
目玉焼きが冷めちゃうじゃない…もう…
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