厄災

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厄災

 私は胸の内からドロドロ溢れ出す思いを、どう扱っていいのが分からずに呆然としてしまっていた。そんな私をステファン様は不思議そうな顔で覗き込む。 「どうかしたのか?」 「いえ、何も‥‥‥。ステファン様、レコルトとは?」 「1年に1度やってくる凶悪な魔物だ。倒さなければ、作物は育たなくなるし家畜は片っ端から食われてしまう‥‥‥。『厄災』と呼ぶ奴もいる。毎年現れるが、年々強くなっているんだ」 「毎年強くなる?」 「どういう仕組みかは分からないが、レコルトは魔王領の不浄物が集合体となって顕現する魔物みたいなんだ。魔王領が栄えるにつれて、レコルトも年々強くなっている」 「‥‥‥じゃあ、そのうち倒せなくなるのでは?」 「そうならないように、みな日々鍛錬をしているんだ‥‥‥。だが、分からないな。そのうち限界が来るかもしれない。そうなったら‥‥‥。魔王領どころか、この世界の終わりだな」 「‥‥‥その事を、他の国の人達は知っているの?」 「知らないだろう‥‥‥。でも、分からないな‥‥‥。暴行事件を起こし、魔王領に罪をなすりつけて、魔王領を封鎖しようとしている人族がいるみたいだからな。知っているのかもしれない」 「それって‥‥‥」 「さて、どうすべきか。結局は‥‥‥。問題の先送りだな。次世代に託すしかない」 「あと1600年ってこと?」 「俺の見立てでは、あと1000年は大丈夫だと思う」 「1000年‥‥‥」 「スザンヌも行くか? 危険だが‥‥‥。一緒に行った方が安全だと思うんだ」  不意に覗き込んできた綺麗な赤い瞳に、私はドキッとしてしまった。全く‥‥‥。モテる訳だわ。 「そうね。私も討伐へ行くわ」  私は立ちあがるとステファン様と共に、出掛ける準備をしたのだった。
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