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転移陣
「俺は、ストラウドだ‥‥‥。よろしく。今から庭に星屑石を取りに行く。ついて来てくれ」
「えっ、でも‥‥‥」
さっきの今で、家の外に出る気になんてなれなかった。そんな私を落ち着かせようとしたのか、ストラウドは笑った。
「大丈夫だ。さっき、結界を2重にしたんだ‥‥‥。今すぐ、転移したほうがいいんだろう?」
「‥‥‥分かりました」
半ば強制的に裏庭にある畑へと連れてかれた。庭には『星屑石』がたくさん落ちていた。七色に光る星屑石は前世でいうイルミネーションライトに近かった。幻想的な光景に私は目を奪われてしまう。
昨日、流星郡が見えたから、星が落ちんのだろう‥‥‥。そう思いながら、落ちている星屑石をストラウドと一緒に拾った。地面に落ちている星屑石は時間が経っても7色に光っていて、金平糖みたいに綺麗だった。
「これは、天日干しすれば薬にも使えるんだ。光ってないのは、今は使えないから、そのまま置いといて」
「分かりました」
彼に色々聞きたかったが、とりあえず星屑石を拾うことに集中した。石を100個ほど拾ったところで爆発音が聞こえた。
「え?!」
何度も爆発音が聞こえ、風が吹いてくる。
「マズいっ、とりあえず星屑石を家の中へ運んでくれっ‥‥‥」
ストラウドの慌てた様子に、私は急いで星屑石を家の中へと運んだ。ストラウドの指示で2階へ運ぶと、2階に部屋は無く魔導具の備品や掃除道具が置かれている屋根裏みたいな場所だった。
「破られた結界は、俺が作った方だから安心しろ。師匠の結界は、そんな簡単に破られたりしない」
そう言いながら、ストラウドは魔法陣が描かれた用紙を床に押し広げた。魔法陣の四隅に燭台を置き、明かりを灯して周りに石を敷き詰めるように並べていった。
「いいか‥‥‥。一度しか言わないから、よく聞け。俺が転移魔法を使えるのは1日1回だけだ。上手く行けば30分で転移魔法が発動する。それまでは魔法陣の上にいてくれ。何があっても、動くなよ」
「成功の確率は?」
「70%かな‥‥‥。大丈夫だ。おい、アース!!」
(70%?! 本当に大丈夫??)
ストラウドが叫ぶと何処からか、ムササビのような動物が現れた。
「御主人様、用かにゃ?」
ムササビみたいな小動物は、小粒な瞳を私達に向けると、長い尻尾を揺らしていた。
「俺の使い魔だ‥‥‥。アース、俺達2人を少しの間守ってくれ」
「しょうがないにゃ〜」
アースはそう言うと、尻尾を床に叩きつけながら胴体を長く伸ばし、私達に覆いかぶさるようにドーム型に変形した。
「よし、これで集中できる‥‥‥。えーと、スザンヌ?そこに立っててくれ」
「待って‥‥‥。さっき言ってた、お礼とかはいいの?」
「そんなの落ち着いてからでいい」
「え‥‥‥。行先は?」
「大丈夫だ。悪いが身の振り方は着いてから考えてくれ‥‥‥。とにかく、今は時間がない。集中するから、黙ってて」
「‥‥‥」
(身の振り方って‥‥‥。私は一体、どこに飛ばされるのよ‥‥‥)
危険が迫ってくる中、私は黙って魔法陣の上に立っていた。また別の男性の断末魔が聞こえたり、威嚇するようなアースの唸り声がしたりして転移陣の上で動くことも出来ずに震えていたが、30分後には魔法陣が光り始め、気がつくと私は知らない場所の知らない部屋に蹲っていたのだった。
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