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新人研修
次の日の朝。何も持ってい来てなかった私は、タンスの中に入っていたメイド服を着ると、執事のアーデルハイドさんの案内で厨房へ来ていた。
「朝はここで、朝食を取ってもらっています」
厨房の手前にある食堂でパンとサラダ、スープがバイキング形式で置いてあった。朝8時までは、ここで朝食が食べられるという。
「先に、朝食を済ませてしまいましょう」
「はい」
私達が朝食を食べ終わって大広間へ行くと、メイドや侍従らしき人達が一列に並んで待っていた。
「今日から一緒に働くことになった、セシルさんだ。みんな仲良くするように」
私は、魔王領にいる間だけ『セシル』と名のることにした。名前がないと何かと不便だし、今朝アースと話し合って、仮の名前を決めたのだ。
「「「はい!!」」」
アーデルハイドさんの一声に、大広間にいた3人は元気よく返事をした。
「吸血鬼のハイディよ。よろしく」
「セシルです‥‥‥。よろしくお願い致します」
「最近の吸血鬼は、血を吸ったりしないから怖がらなくても大丈夫よ」
私の一歩引いた態度に嫌な顔をせず、笑顔で挨拶してくれたハイディさん。
「そ、そうなんですね」
「淫魔のマーサよ」
「よ、よろしくお願い致します」
次に挨拶してくれたのは、中性的な顔立ちでショートカットの髪型、マーサさん。真顔で私の顔をジッと見つめていた。
「クレオだ。よろしく」
「よろしくお願い致します‥‥‥。クレオさんは、人間なんですね?!」
「いや‥‥‥」
「‥‥‥」
「幽霊なんだ」
「えっ‥‥‥」
金髪に青い瞳のクレオさんは、どう見ても普通の人間だったため、驚いてしまった‥‥‥。それにしても、魔王城には幽霊もいるのね。
「さて、一通り自己紹介もすんだことだし、仕事をしてもらうよ‥‥‥。今日は書庫の整理をしてもらう。ついておいで」
アーデルハイドさんに誘導されて、ついて行った2階は、執務室のような造りで机とソファーが置かれている小部屋だった。棚から手持ち用のランプを取り出すと火を灯し、私に手渡して近くにある螺旋階段を降りていった。
「段差があるから気をつけて」
「はい‥‥‥。ありがとうございます」
地下にある書庫は全体的に埃っぽかった。ここを掃除するのが今日の仕事みたいだ。
「お昼頃また迎えに来ますので、お掃除をお願いします」
「はい、よろしくお願い致します」
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