自由とは

1/1

378人が本棚に入れています
本棚に追加
/97ページ

自由とは

「リリア様・・・どうしたのです?何か悪いものでも口にされましたか?」 私は顔が熱くなるのを感じながら必死になって言った。 「はぐらかさないでよっ・・・私はもう成人したの。真面目に答えて」 「俺は・・・君に相応しくない」 「何言って・・・」 「前に言っただろう・・・俺は、魔王ステファンから生まれたって・・・そのせいか、普通の魔族とは身体の作りが色々違うみたいなんだ」 「・・・・・・」 「俺は・・・人族と結婚しても相手に寿命を分け与えることや、魔力を半分渡すことが出来ないんだ」 「え?」 「それだけじゃない・・・魔族なら普通は感じる他人の魔力を俺は感じないんだ。だから、相手が自分より強い魔族かどうかなんて分からない・・・闘って初めて気がつくんだ」 私は何故彼が家出をしたのが、人族と暮らしながら、国を渡り歩いて暮らしているのか、だんだんと分かってきてしまった。 「人と仲良くなっても、みな先に逝ってしまう・・・リリア、君も例外じゃない。傷つく位なら最初から手に入れなければいい・・・手に入れなければ、失うものは何もないんだから」 「ごめんなさい、ストラウド・・・貴方を追い詰める様な言い方をしてしまったわ。人の・・・人族や魔族の考え方は、それぞれだもの。無理に誰かを想う必要はないわ・・・貴方が望むときに望める人と一緒になるべきよ」 「ありがとう・・・俺は、やっぱり城を出るよ」 「何言って・・・」 「宰相補佐を辞任する・・・もともと君が成人するまでの予定だったんだ。仕事だって、もう1人で出来るだろう?」 「ストラウド、貴方がいなければ私は・・・」 「君にいい人が現れるのを祈っているよ・・・俺がまた、流浪の民に戻るだけの話だ」 「・・・・・・」 「サクフォン伯爵、いい奴だったろ?」  「ストラウド、私が貴方の好きな人を決められないように、貴方も私の好きな人を決める権利はないわ」 「・・・・・・ああ、そうだな」 「好きでいるのは、自由でしょう?」 「・・・・・・・自由だ」 私は泣きそうになりながら、彼に向かって微笑んだ。
/97ページ

最初のコメントを投稿しよう!

378人が本棚に入れています
本棚に追加