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羨望と嫉妬
「まったく、もう‥‥‥」
「あなたが魔王様の所有物になるとはね~」
「本当に羨ましいです」
「‥‥‥え?」
吸血鬼のハイディ、淫魔のマーサ、幽霊のクレオと昼食をとっていると、羨ましがられた。何故かは分からないが‥‥‥。
「まあまあ、2人とも。今日は新人のお祝いをしようじゃないの」
ハイディさんは2人の先輩らしく、2人を宥めていた。私は、いまいち状況が掴めないまま3人の話を聞いていた。
「そんなにいいんですか? 魔王の所有物って‥‥‥」
「何を言って‥‥‥。栄誉な事なんだよ。なんたって人間界における、けっ‥‥‥。んぐっ。何するんだよっ」
「お前が余計なことを言おうとするからだろ」
クレオさんは何かを言おうとして、ハイディさんに目の前にあったフランスパンを口に詰め込まれていた。
「で? どうなんだい、魔王の所有物になった感想は?」
「えーっと‥‥‥。3人の話から察するに、私は奴隷になった訳ではないのですね。」
「「「奴隷?!」」」
「‥‥‥奴隷って何だ?」
クレオさんの質問にハイディさんは、溜め息を吐いて下を向いていた。
「所有物になった理由は、魔王様に直接聞いてみた方がいいだろうね」
「‥‥‥はい」
「こうやって、みんなで集まって食事が出来る事は少ないんだ。分からないことがあったら、今のうちに何でも聞いておくれ」
「ありがとうございます」
今、1番気になっているのは『所有物』についてだったが、そんなことを聞ける雰囲気ではなかった。
「メイドや侍従の仕事をしているのは私達だけではないんですよね?」
「そうさ。私達は、執事のアーデルハイド直属の特別部隊になる」
「特別部隊‥‥‥」
「早い話が、あぶれ者の集まりさ。どこにも所属出来なかったり、吸血鬼だからって怖がって嫌がらせをしてくるような奴も中にはいるからね。同じ魔族なのに‥‥‥」
「そんな‥‥‥。私達は、皆さんと同じ班で良かったと思っています」
「あんた、いい子だね‥‥‥。ってな訳で、うちの班は何でもやる何でも屋って訳さ。そのうち書庫の掃除なんて比じゃない位、すごい現場に当たるかもしれないから、覚悟しとくんだね」
「え‥‥‥。あれより、もっとですか?」
私の驚きに、ハイディさんは豪快に笑っていた。
「もちろん‥‥‥。さぁ、食べたらもう一働きするよ。午後も頑張りな」
私達は、朝食を食べ終わるとそれぞれの現場へ戻った。夕方になると、アーデルハイドさんは忙しかったらしく、ハイディさんが迎えに来て、寮まで送ってくれた。魔王城は広くて、案内がないとまだまだ迷ってしまう。
「ありがとうございます。おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
私はハイディさんに挨拶をして部屋の中に入ると、シャワーを浴びてそのまま寝ようとした。
今日一日、知らず知らずのうちに気を張っていたらしく、すぐに眠気が襲ってきて、そのままベッドに入って寝ようとしたが、暗闇に引きずり込まれる様に何かに吸い込まれて、気づいたらまた違う部屋へと来ていた。
「お前、俺の所有物になったのに、そのまま寝るのか?」
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