377人が本棚に入れています
本棚に追加
/97ページ
再び休暇②
「いや、魔王の正妃になってから・・・恨みとか妬みとか、怖いなって思うことが多くて・・・私はステファン様のお陰で未然に防ぐことが出来たから、どうってこと無かったんだけど、リリアは1人で太刀打ち出来そう?・・・お父様には、リリアのこと守ってくれるようにお願いするつもりだけど、王宮内は一筋縄じゃいかない相手ばかりよ」
私はサクフォン伯爵の、人好きのする爽やかな微笑みを思い返し、あの人に酷いことをするのは罪悪感が芽生えてしまうだろな・・・などと考えていた。
「あーうん、分かってるわよ。サクフォン伯爵がちょうど良い相手だってのは・・・サクフォン伯爵は、私のことが「好きだ」って言ってたの・・・私と婚約して・・・相手に気を持たせるのも悪いじゃない?」
「私は相手が「それでいい」って、言ってるんだったら、それで良いと思うけどね」
「・・・え?」
「リリア、よく考えてみて。国王がお見合いを断り続けるのは実質、不可能よ。夜這いされて既成事実を作られてしまう前に、サクフォン伯爵と仮面夫婦になりなさい」
「よっ、よばい?」
「無いでしょうけど、それと似たことは起こるんじゃないかしら・・・私も元ソンソムニア王国の公爵令嬢だしね・・・いろんな噂は聞くし、だいたいの想像はつくわ」
「うーん・・・どうするべきか、もう一度考えてみるわ」
「そうして・・・あっ、そうだ。これ、サクフォン伯爵に渡してくれる?魔王領で作ったワイン・・・デザートワインだから甘いんだけど、魔王領産の商品を広めたいと考えているの・・・協力してもらえると助かるわ」
スザンヌは、マジックバッグからワインをもう1本取り出すと、テーブルの上に置いていた。
「いいけど・・・もう帰るの?」
スザンヌは手のひらを上に向けると目の前に手を翳し、黒い渦を作り出していた。
「ええ・・・早く帰らないと、またステファン様が迎えに来ちゃうわ。またね、リリア・・・私は何も出来ないけど、リリアにとって良い結果になるように祈ってるわ」
「ありがと。スザンヌ」
目の前の黒い渦が大きくなると、スザンヌは飲み込まれるようにして、慌ただしく帰って行ったのだった。
最初のコメントを投稿しよう!