プロローグ

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「中でも鼻は忘れられません。内供の鼻に対するコンプレックスが彼の一生を左右している様ですが、これは現代の我々にも通ずるものがあります。僕には彼のように大きな鼻はありませんがーー」  突然登場人物紹介もなしに饒舌に語り出した田中君の様相も、ここではありきたりなことで。私は動揺を悟られないように近くのグラスを一気飲みした。 (鼻って何の話!? ナイグって外国人!? 私、羅生門しか知らないですけど!?)  息を殺して教授に目をつけられないようにしていたけれど、新規ゼミ生の卓に順番に回ってくるのならばもう無理だ。 (次の私の番で、私は恥を晒してゼミ社会で死ぬんだ)  頭がグルグルと回転する。  フラフラとする身体を受け止めてくれたのは、田中君の反対隣に座っている背の高い男子だった。 「すみません、仲原さんの具合が悪そうなので外の空気を吸いに」 「おぉ、気が利くな」
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