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プロローグ
アカデミーが嫌いだ。
そして、アカデミーの飲み会はもっと嫌いだ。
お座敷茶屋の薄暗い照明の中、ガヤガヤとした雰囲気が耐えられない。茶髪のショートカットが背景の木の保護色になって隠れられないかなんてことをずっと考えている。文学部なんて、メガネを掛けているだけで迷彩服のようなものなのに。
「田中くん、好きなモノは何かね? 詩人や作家でも良い」
顔を真っ赤にした教授が、グラスを片手に私達ゼミの新入生を相手に絡んでいる。田中君は私の隣の人で、次は私の番だ。私の無知がバレてしまう。
「芥川龍之介ですね〜」
田中君の答えに豆腐サラダを食べながらソッと安心する私が居る。
(良かった。私でも知ってる有名人のことを話しても大丈夫なんだ!)
ここには「たまご」しか居ない。
将来の学者のたまご。国語の先生のたまご。
就活の通り道みたいに思っている「たまごにもなれない中途半端な奴」は、きっと私しか居ないに違いなかった。
だから、この飲み会に出て自分の甘さや浅さを実感するのが背筋が凍る程に恐ろしかった。
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