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カキンカキンと金属同士がぶつかる嫌な音がする中、マルドネス様の隣に立っていたクリフ様がカッと目を見開き剣を抜いたと思うとびゅんとひと振りした。
ガンガンっとクリフ様の足元に矢が落ちていく。
件を持った賊だけでなく矢がクリフ様を狙っていた。
そんな、そんなことが起こるなんて。
足元から崩れ落ちていきそうなほどの恐怖を感じる。
誰が狙われているの?
アリアナ様とそのお子様?
まさか、クリフ様なの?
あの矢は真っ直ぐクリフ様を狙って飛んできたような気がする。
「捕えろ!」
クリフ様の指示に矢が飛んできたと思われる方向にリクハルドさんが駆けだし、クリフ様はもと居た応接室のドアを開けてアリアナ様たちに入るよう促している。
そんな時だった。
たった今まで集団の一番後ろで怯えて震えていた様子だったアリアナ様の侍女の手が動いたのは。
彼女の手には細く尖った特徴的なナイフが握られていて、なぜか今は彼女の手は全く震えておらずギラギラとした目をしている。
女が応接室のドアを支えマルドネス様とアリアナ様を誘導していたクリフ様の背後に回りこみナイフを持った手を振り上げるのが私の目にもはっきりと見えた。
気が付いた時には駆けだしていた。
声を出す余裕なんて何もなかった。
私にはクリフ様を突き飛ばすような力などはない。
私にできるのはナイフとクリフ様の間に身体をすべり込ませることだけ。
動け、足。
早く、早く。クリフ様の元へ。
「----うっ!」
感じたのは、熱。
熱い、焼かれた鉄棒でも刺さったんじゃないかって感じ。
でも、私は間に合った。
女がクリフ様の背中に突き立てようとした細いナイフを自分の背中で受け止めることができたのだ。
熱い、背中が熱い。
痛みではなく、それは熱だ。
「かっ、楓ー!」
クリフ様の声が聞こえた。その後はきゃーと言う女性の悲鳴と男性たちの慌てた声。
ああ、あのヤナーバル様にここから落とされた時みたいな騒ぎだなと他人事のように思う。
反対に背中に感じる熱は徐々に痛みに変わっていく。
刺されて崩れ落ちた私の身体をクリフ様が抱きとめる。
「楓、かえでっ。どうしてこんなーー」
私は徐々に強くなる痛みを堪え、私の身体を支えるクリフ様の腕をぎゅっと握り返して視線を上げた。
「ク、クリフさま、お怪我はーーないです、か」
「かえでっ!」クリフ様の綺麗な赤い瞳がゆらゆらと揺れている。
「わ、わたしは、だ、いじょうぶです。しんぱいし、ないで」
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