襲撃

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竜殺しの毒が効かないと言っても毒は毒だからか、それとも刺されたことによるものなのかわからないが、私はそれから熱を出してしまった。 医師の処方した解熱剤も魔法省長官のリチャードさまの魔法でも解熱しないことで周りの者を大層心配させてしまったのだけど、そう高熱でもなかったし少し息苦しく眠いだけ。周りが大騒ぎするほど私は辛いわけではない。 クリフ様が戻ってくるまで少し寝て体力を回復しておこうと人払いをして眠りについた。 侍女もメイドも竜王の命令もあり、離れることを嫌がったけれど同じ部屋に他人がいると気になって眠れないのだ。 だってみんな心配そうに私の様子を窺っているから。 その代わり・・・といつもの3倍の護衛が窓の外、ドアの向こうにいて、私のベッドの周りや枕元にはいろいろの魔石が置かれていた。 回復、異常検知、不審者侵入センサー、連絡用インターホンみたいなもの、アロマの香りがするもの、用途不明のモノも何やらたくさん。 枕元もベッドサイドのテーブルも石だらけなんだけど。 始終顔をのぞき込まれて皆に不安げな顔をされるよりはずっとましだと思い我慢することにした。 だけど、ネリが持ってきた今竜の国で評判のイケメン竜と恋に落ちる夢が見られるという魔石だけはネリに持って帰らせた。 それはクリフ様に見つかると後がうるさいだろうから。 ちょっと見てみたかったけどね。 ぐっすりと眠っていたはずだけど、頬を撫でられた気配がしてその余りの気持ちよさにこちらからすりすりとすり寄ってしてしまう。 「楓、目が覚めたか?」 躊躇いがちなその声に私は薄目を開けた。 そっか、あれからひとりで寝かせてもらっていたんだっけ。 ボーっとする頭で「お帰りなさいませ、クリフ様」と声をかけた。 「ああ、その言葉、本当に久しぶりだ」 嬉しそうな声に今度はしっかりと目を開け目の前の人に笑顔を見せた。 「長く家出をしてしまって申し訳ありませんでした」 途端にぎゅっと抱きしめられた。器用に怪我した場所を避けて。 「お帰り、楓。なあ、”お帰り”でいいんだよな?」 「そうですね、とりあえずこの先出て行くつもりはないので」 「楓」 クリフ様の嬉しそうな声と共に額と頬にキスが落ちてきた後、私たちはゆっくりと見つめ合った。 「お帰り、楓」 「ええ、ただいま、クリフ様。そしてお帰りなさい」 そして私たちはまたゆっくりとキスをした。
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