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うんうん、わかったわかったとパメラさんも宥めて、私は面会に備えてガウンを着せてもらいクッションを何個も使って背当てにしてもらった。
パメラさんの言うこともわかる。
ここまでの一連の出来事が全てマルドネス様の親戚関係絡みなのだから。
ヤナーバル様はマルドネス様の姉の夫の父親。
ミーナ様は姉の娘。
ナイフを向けた侍女は姉の紹介で身重のアリアナ様の侍女になった女。
全てがマルドネス様のお姉さまに繋がっている。
人々の疑惑の目はマルドネス様にも向けられていた。
ノックの音がしてマルドネス様とアリアナ様の来訪が告げられた。
お二人は入って来るなり、膝を床に付け首を垂れてしまったので仰天した。
「この度は私の姉の嫁ぎ先が楓さまに取り返しのつかないご無礼をーーー」とマルドネス様がはじめたので更に心臓が縮みあがり心の中で悲鳴をあげた。
「お止め下さい、マルドネス様。それにアリアナ様もお顔を上げて下さい。そのような格好ではお腹の子も苦しくなってしまうし、アリアナ様のお身体が。
リクハルドさん、椅子を、ううん、窓辺のソファーをここに運んでちょうだい。お二人に座っていただいてー」
「いえ、それは」ダメだとと言い出したマルドネス様に
「では私も床に下ります」と身体を起こしベッドから出ようと足を出したら、これにはマルドネス様とアリアナ様だけでなく私の侍女たちも一気に顔色を変えた。
ソファーに座る座らない、床に下りる下りないで揉めていたら笑い声がしていつの間にか部屋の中にクリフ様が入って来ていた。
「楓、おとなしくベッドにいる約束だろ?マルドネス、お前たちも楓の言うことを聞いてソファーに座れ。楓は強情だからな、話が進まん」
そう言って自分はベッドに腰かけて私を膝の上にひょいっと乗せた。
えええー、何、人前でこの恥ずかしい体勢は。顔も近いし。
恨みがましい目を向けると、整った顔が楽しそうに緩んでいく。
・・・言っても無駄だわね。
私たちの姿を見てお二人も渋々ながらソファーに腰を掛けた。
もちろんアリアナ様にはマルドネス様が手を貸していた。うん、やっぱり妊婦さんに無理をさせてはいけない。
「楓には簡単に事情は伝えてある。監督不行き届きと言えばそうだが、直接的にお前たちはどの件にも関与していないだろう。あまり大げさにすると楓が嫌がる。謝罪なら簡単にしてくれ」
クリフ様の言葉に私もこくこくと頷いた。
「しかし、ヤナーバルは楓を殺そうとしたし、妻の侍女は陛下を狙ったのだ。これはもうどんなに謝っても許される罪ではない」
マルドネス様が首を垂れる。
「でも、マルドネス様もマルドネス様のお姉さまもヤナーバル様の件に関与はなかったと」
私はクリフ様からそう聞いた。ヘストンさんや、ラウルさんからも。
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