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「ああ、そうだ。妻の侍女に関しても姉から紹介されたのだが、実際は夫の実家の息のかかった女で元は姉の侍女だったがまさかそんなことを企んでいるような女だったとは姉も知らなかったそうだ。
だが、これは知らなかったでは済まされないほどの事態だ」
マルドネス様の隣に座るアリアナ様も真っ白い顔色をして頷いている。
「では、どうされるおつもりなんでしょうか」
「私も姉も死罪を覚悟している。ただアリアナは助けてほしいのだ」
死罪?
私は驚いてクリフ様の顔を見た。
クリフ様は片眉を上げ肩をすくめてやれやれという顔をした。
「何度も言うが、お前が死んでどうなると言うのだ。いい加減にしろ」
「いや、我が家はそれほどまでのことをしたのだ。陛下を殺そうとするなど万死に値する行為だ。楓殿が陛下をかばって下さらなかったらどのようなことになっていたか。いや、それで陛下の唯一である番の楓殿がこのような状態に」
マルドネス様は首を振った。
「ーーとまあこういうわけだ、楓。何とかしてくれぬか?」
困った顔をしてクリフ様が私の手を握る。
ああ、そういうことなんだと私も頷いた。
「クリフォード陛下、わたくしマルドネス様のお姉さまのご家族の処罰に関してはわかりかねますが、マルドネス様の処罰に関しては意見がございます」
私はちょっと背筋をのばしてクリフ様に微笑んだ。
「何だ、言ってみよ」
「はい、ありがとう存じます。マルドネス様は死罪でいいと思います。」
さらりと放った私の言葉にアリアナ様がひゅっと息を飲んだのが目の端に映った。
「でも、ただの死罪ではございません。今までの怠慢を取り戻すように陛下の元で死んだように働くと言う意味でございます。
ーーだいたい、マルドネス様は今までがサボりすぎていたんです。ヘストンさんからも、陛下の側近たちからも散々愚痴を聞かされていました。
皆さん、口を揃えて仰るのです。”もう少し奥方様から離れて働いて欲しい”と」
私の言葉にクリフ様は笑顔になり、マルドネス様とアリアナ様は目を丸くした。
「ええ、ですから、しっかりと死ぬ気で働いていただきましょう。この先、ヤナーバル様のお家は処分されるでしょう?その穴埋めと今まで働かなかった分、それと私と陛下が過ごす時間も作っていただかないと。
9時登庁18時退勤。忙しい時は残業ありです。今までのように13時登庁、16時退勤で週休4日とかは絶対に許しませんから。
ああ、育児休暇は差し上げますけど、マルドネス様のご家庭は乳母も侍女もいますから長期休暇はダメですよ。時短にするとか上手に使ってくださいね。
ああ、いい忘れてましたけど、フレックスタイム制はオッケーです」
言い終えると、私はクリフ様に微笑んだ。
「ね、陛下」
「そうだな。楓は執務室の現状をよく知っているからな。いい処罰だ」
私はクリフ様の膝の上でいい子だと頭を撫でられていた。
ちょっと子供っぽくて恥ずかしいけれど、これはこれでいいんじゃないだろうか。
私たちは見つめ合って微笑んだ。
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