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両親は丹念に傷口を診ている。
受傷した状況や凶器についてはあらかじめクリフ様から聞いていたらしく、幾つか確認をしていた。
痛みはほとんどない。
ただたまに疼くような嫌な感じはあった。
「これならば傷跡は多少残るが、体内への影響はなさそうだね」
「ええ、よかった。これも竜王陛下の治療魔法と楓の治癒能力の高さのせいね」
両親はホッとしたように私の背中を見つめケロイド予防の薬を塗ってくれた。
ただクリフ様だけが厳しい表情をしていた。
私は彼の顔をじっと見つめた。
「自分のせいで私の身体に傷をつけてしまった、申し訳ないーーーなんて思ってるのなら大間違いよ」
「いや、私のせいだ」
「違うわ。私が進んであの場に飛び込んだのよ。私の意思だし、むしろ名誉の負傷。
見えない背中の傷なんてどうでもいいのよ。大切なのはクリフ様の存在。何度も言わせないで」
私はブラウスを直すと、クリフ様の手を掴んで自分の鱗のある左胸に持って行った。
ね、とほほ笑みを送るとクリフ様の表情が穏やかなものに変わっていく。
「あらあら娘は嫁ぐ気満々みたいだし、どうする?お父さん。責任を取って竜王陛下にお嫁にもらってもらいましょうか?」
くすくすと母が笑い出し、父はまたへの字の口になってしまった。
そうだ、両親にクリフ様とのことを話さないといけないんだ。けれどその前にさっきの話を聞きたい。
「お父さん、お母さん、さっきの話だけど」
どうしてここに両親がいるのか、呪いとか紫の玉とか、聞きたいことはたくさんあってもう我慢ができない。
「あのナイフと紫の玉、あと”呪い”に”霊水”。気になる言葉だらけだし、お父さんたちがどうしてどうやってここに来たのかってことも」
せかす私に両親も困った顔をして口を開いた。
「私たちもいきなり竜王陛下が家に来たのだから驚いたわよ」
「そうだ、しかも一人娘がナイフで刺されて呪いまで受けたかもしれないと聞かされたんだからな」
ああ、まあそれはごめんなさいなんだけど。
「さっき”呪い”って言ってたけど、私、呪われたの?誰に?」
「もちろん、あの竜殺しのナイフを作った魔女によ」
父は頷き、母は当たり前だという顔をした。
驚く私と違いクリフ様も大きく頷いた。
「どういうこと?私の体調がいつまでも戻らなかったのはケガのせいじゃなくて呪いだったってこと?」
なぜ私が呪われたのか、そしてそれをどうして両親が物知り顔で言うのかを聞かないと。
「きちんと説明して」と私は目の前の三人に強く主張した。
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