魔女の呪いと女神の血

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「ピュリナ様とジョルジナ様は仲の良い姉妹だったのに、ジョルジナ様が遠い別の世界の長である竜王に恋をして姉の反対を押し切り結婚したことでジョルジナ様とピュリラ様は仲たがいをしてしまったの。 だから、ピュリラ様は知らなかった。妹が夫を亡くし、その後妹も子どもを産んだ後に魔女の呪いによって彼女も亡くなったことを」 父の言葉を母が繋いでいく。母の言葉を父が繋いでいった。 「ピュリラ様がそれを知ったのは妹が亡くなったあとだった。 竜の国の神殿に国民が次々と集まり、呪いにかかっても王妃のジョルジナ様が亡き竜王のお子さまを産んでくれたことに感謝をし心から悼んだ。 ピュリラ様は仲違いをしたまま妹と連絡を取らなかったことを後悔して泣き暮れたそうだ。 その後は陰ながらジョルジナ様の忘れ形見の子どもを見守り、自分たちが亡くなった後もその子が治める国に未曾有の危機があれば”救国の旅人”として自分の身内を送り込むようになったというわけだ」 ピュリラ様のことを語る母の顔は苦しそうで、大昔の話だというのに今でもピュリラ様が苦しんでいるようにも聞こえる。 ピュリナ様とてもう大昔に亡くなっているのだからおそらく今頃はジョルジナ様と再会しているだろうに。 父はそんな母の手の上に自分の手を重ねて言った。 「私も母さんもピュリラ様の遠い遠い子孫なんだ。私たちはもう神と繋がりなど無いに等しいほどにただの人間なんだけれど、それでも私たちや楓の身体にはピュリラ様の血が少しだけ流れていて、それはこの国に嫁いだジョルジナ様にも繋がっているというわけだ」 「だから、私が呪われてしまったってことね」 「そう。でも、楓が呪いを受けても死んでしまうほど衰弱しなかったのは女神さまの血が薄いことと幼いころから我が一族に伝わる粉薬を飲んでいて丈夫な身体を作っていたからだし、呪いを解除できたのはピュリラ様の神殿に湧く泉の霊水を飲んだからなんだ。 ーーージョルジナ様を亡くした後でピュリラ様は呪いの研究や薬の研究に打ち込み、その結果呪いだけでなく医療にも精通するようになった。その影響でピュリラ様の血筋の者には医療従事者が多いんだ。私たちみたいに、な」 そうなのよ、と母が父に同意して頷いた。 「クリフ様は”救国の旅人”のことをご存知だったんですね」 クリフ様に視線を送ると、ゆっくりと首を縦に振った。 「そう言う存在がいたということは知っていた。だが、今もいるとは考えたことはなかったんだ。歴史上そう言う存在が送られてきたことがあったと聞いていた。ーーー竜の国は女神の国に対して失礼なことをしていたな。お出迎えすることもしなかった」 「ピュリナ様は恩着せがましいと思われたくなかったのかもしれません。ピュリナ様が亡くなったあとも数人の救国の旅人がこちらに来ていますが、皆こっそりと活動していましたから」 そう言って両親は薄らと笑った。
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