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彼らに僕らがまだ「視えて」いた頃は、僕らが出てくると逃がしていたけれど、いつしか彼らは僕らが「視え」なくなり、多くの仲間たちが失われてゆくこととなった。 それまではずっと焦がれていたんだ。 彼らの世界に。 でもそれからはずっと願っていたんだ。 彼らに、僕らと同じ恐怖や悲しみや絶望を味あわせてやりたいと。 だから長い長い年月考えて、勝算のない計画と分かっていたけれど、それでも世界を逆転させるために、僅かな希望を支えに準備をしてきた。 彼らの中から、僕らの道具であり武器となるべき『神さま』を選び、接触し、心に深く入り込んで安心させ、感謝の気持ちなのだと、定期的に白の実を与え続けた。 白の実は僕らには大切な栄養源。でも彼らには少しずつ思考を破壊する、僕らの操り人形になる為の毒。 仲間を助けさせ、笑顔で騙して白の実を与え、また助けさせ、騙し…その繰り返し。 神さまは優しかったし、気付けば大好きな存在にもなってしまっていたけど、罪悪感もないわけではなかったけど、だけどそれ以上に、世界の逆転を願う気持ちの方が大きかった。 そして 時は満ちた…。
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