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周りは、小さな波がある透明な水に囲まれている。皆はそれを海と呼んでいる。しかし、そこに生物はいない。岩や水草みたいなものもない。海と呼ばれているだけで、何もない透明な水。 そして、陸と呼ぶ僕らが暮らしている場所も、見渡す限り砂地で何もない。あるのは小高い場所の中心に生えている巨木のみ。 食料も、その巨木に実る白い殻に覆われた実と、葉から定期的に流れ落ちてくる水のみ。 気候は暑くもなく寒くもなく、とても過ごしやすい。強いて困ることと言えば、一日に数回起こる小さな地震。だけどそれも巨木に掴まりじっとしていれば、すぐにおさまるから慣れてしまった。 ここには何かを作る材料もないから、家のような建物もなく、着るものもない。そして特にやることもなく、僕らはただ巨木の周りで仲間と話をしたり、巨木に実る実を食べたり、時にはふざけあったりしながら、大きな不満などもなく、平和に穏やかに過ごしていた。 その日もいつものように、仲間と他愛のない話をして過ごしていた。すると、まるで世界が横倒しにされたような大きな揺れに襲われた。 揺れと同時に、体を海へと持って行かれそうになって、僕らは巨木にしがみついた。しかし、何人かは海へと滑り落ちて行ったしまった。 こんな大きな地震は初めてだ。 それよりも、これは本当に地震なのか? 空からはゴーン、ゴーンという不気味な音が響いているし、しばらくすると大きな亀裂も入り、目を開けていられないような強烈な光が、その亀裂から溢れ出した。 仲間たちは巨木にしがみついて「怖い」「助けてくれ」と泣き叫び震えていた。だけど僕らはただ、巨木にしがみついていることしか出来なかった。
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