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私は別に「視える」人ではない。むしろその逆で霊感とかそういうものは一切ない。
ないけれど…
でも一つだけ、他の人たちには見えないものが「視える」
それが幸か不幸かは分からないけれど…。
それは私がまだ小さかった頃の話。
目の前には母が作ってくれた卵焼き。いつもと同じ卵焼き。でもそれは今までと全く別物で、到底直視出来ないものだった。
私はその日、突然に「視える」ようになってしまったのだった。
まだ幼かった私は、恐ろしくて残酷なそれを見ていられなくて、目の前の卵焼きを皿ごと手で薙ぎ払って、大声を上げて泣きじゃくった。
「あらあらどうしたの〜?卵焼きがそんなに嫌だったの〜?」
母はそんな事を言って私を宥めたけれど、問題は卵焼きが嫌いとか嫌いじゃないとかではなかった。それがもし卵焼きではなく、目玉焼きだろうが、茶碗蒸しだろうが、恐らくケーキだろうが、私は同じことをしただろう。
なんで?
なんでお母さんには、それが見えないの?
なんでそれを普通に食べることが出来るの?
なんでそんな残酷なものを私に食べさせようとするの?
まだ幼い私に、それが私にしか見えないのだと理解するのは難しかった。けれど、自分にしか見えないのだと理解してからは、周りを納得させつつ、卵を使った料理を一切食べないようにするために、卵アレルギーと偽ることにしたのだった。
正確には、食べないようにするというより、食べることが出来なくなったのだけれども。
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