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言葉が通じると分かり、初めて助けたあのこたちに色々と質問をして、あのこたちの住んでいた世界には、海と呼ばれる水に囲まれた、1本の巨木の生える小高い砂地しかなかったということと、食料はその木に実る、白い殻に覆われた実と、その木の葉から流れ落ちる水だけだったこと分かった。 それを聞いて、卵液や割った卵にちっちゃい木が浮いていたり、卵料理にちっちゃい木が突き出ていたことが、やっと納得出来た。 そして、あのこたちの言う巨木は、不思議なことに、私の作った小さな世界に植えるときちんと根を張り、元の姿に戻り白い実を沢山実らせていた。 私は、その実の殻のようなものを剥いて、両手で抱えて美味しそうに食べているあのこたちの姿が、とても可愛くて大好きだった。 あれは究極の癒しね。 今までの事を思い出しながら、あのこたちの新しい家を作っていると 「神さま〜」 という可愛らしい声。 手を止めて声のする方を見ると、あのこたちが集まっていて、嬉しそうに殻を剥いた状態の白い実が沢山入った籠を掲げていた。 私は小さな世界に手を入れて、小さな籠を壊さないように受け取った。 あのこたちは、いつの間にか私の事を『神さま』と呼ぶようになり、感謝の気持ちだと、この白い実を渡してくるようになった。 私はあのこたちの姿が「視え」て、言葉が分かるだけだし、あのこたちのほんの一部しか救えていないのに。 世界中の卵を割りまくって、手当り次第に救ったり出来る訳でもないのに『神さま』だなんて… それでも そう呼んでくれる気持ちが嬉しい。 あのこたちの主食の白い実は、あのこたちには両手で抱えるような、例えるならダチョウの卵のような大きさだけど、私の手の上だと小さな錠剤くらい。籠いっぱいでも一口で食べられてしまう。 そんな小さな実だから、私が剥けずに何度も潰してしまったのを見て、いつからかわざわざ殻を剥いて持ってくるようになった。 そんなあのこたちの優しさが、私の心を温かくしてくれる。 私の心をこんなにも温かにしてくれるあのこたちを、これからも沢山救ってあげたい。守ってあげたい。 思わず顔を綻ばせ、私は手の上に乗せた白い実を口に入れた。 あれ? いつもは僅かにゆで卵の味がするのだけど、今日はいつもと違い、蜜のように甘く、ゴクンっと飲み込んだ瞬間、激しい目眩に襲われて、その場にくずおれた。 なにが起こったの…? 直後に起こった耐えられないほどの頭痛。そして「あのこたちを守らなければ」という思考に、頭の中が急速に支配されていった。 「…私が守ってあげなくちゃ…守って……ああああああああぁぁぁっ」 私は頭を抱えて、その場に倒れた。 そこから先の記憶はとても曖昧で… 私は立ち上がり、フラフラと自分が作ったあのこたちの小さな世界へと向かい、あの巨木と呼ばれているものを全て手に取って、それから…それから……… 世界中にあの巨木が出現して、人々が逃げ惑って…… 私の記憶はそこで途切れ、その後この世界に何が起きたのか、私が知ることはなかった…。
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