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とってもぼんやりした話、でしょ?はっきり言ってあたしも全然、怖いとか思わなかったの。むしろ、いつ先輩の手のグラスが滑り落ちて大惨事になるか、の方がハラハラしてたくらい。
何が起きるかわからないし、正体もわからないけど何かに誘われてるのかも?とか言われても。
怖いことが起きる保証もないんじゃ、怖がりようもないよね。
それに、無意識で起きることなら誰にも対策しようがないでしょ?
『無意識にそうしていた、って気付いたところで引き返すのか唯一の対抗策。でも、人間ってさ、勿体無い精神が働く生き物だからそれが厄介なワケ。さっかくここまで来たのに引き返すのが勿体無い、とか思っちゃうんだ。で、好奇心の魔物ってものもあるもんだから抗えない。このまま進んだらどうなるんだろう、ってどんどん先に行っちゃったりもする。本格的にヤバいと思ってからじゃ遅いのになー』
あたしの訝しげな視線に気づいているのかいないのか。
先輩はウイスキーをガブガブ飲みながら、話をこう言って締めたの。
『ただ、昔から親が“寄り道しないで帰りなさい”って言うのは、こういう理由もあるって言われてるんだよ。邪念に惑わされず、余計な道を通らずに帰れって。でないと、自分の本当の帰り道を見失って迷子になっちまうんだーって。……まあだから、お前も気をつけろって話。もちろん、俺もな。こんな感じで酔っ払って気持ちよーくなってるとさあ、ついつい余計な考え起こしたりするもんだしさー!あっはっはっはっは!』
どうやら、先輩は酔ってる自覚は一応あったみたい。その後もビールを追加で頼んで、最後はすっかり机に突っ伏して寝ちゃってたけど。ほんと、最初に飲み放題のお金を徴収しておいて良かったーってかんじ?
……先輩から聞いたのはこれだけ。
でも、あたしは興味が湧いちゃったんだよね。寄り道をしたら、何かが起こるかもしれないっていうの?別に何も起こらなくても気分転換になるし。
まあ、あたしもお察しの通り、かなーり酔っていたからなわけですが。
い、言っておくけどトイレで吐いたりとかしてないし!駅のベンチで寝たりもしてないんだからね!?
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