よりみち、よりみち。

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 ***  で、飲み会のあと。  二次会するぞ!って元気な一部の人と別れて、あたしは駅への道を歩いてた。  “ヒライザカ”は駅が見えるくらいの場所にある。大通り出て、五分も歩けばつく距離。なんだけど、あたしはわざと裏の通りを歩くことにしたの。  夜の十一時を過ぎてたから、一般的な商店とかは殆どが閉まってた。……しゅ、終電は十二時まであるんだってばあそこ!それくらいわかってるって!  と、とにかく!  それで、ね?ヒライザカから駅への遠回りルートっていうのが、ムナカタ商店街を通る道なのね。  ほら、あそこ昔ながらのふるーいアーケードみたいなのがあるでしょう?十時どころか、九時くらいで閉まっちゃうような個人商店が多いわけ。  だから、あたしが通りがかった十一時過ぎは、どこもかしこも完全にシャッターが閉まってた。最近はコロナもあって閉店しちゃう店が増えたらしくて、そもそもシャッターが降りたままの店もあったみたいだけどね。  駄菓子屋。  眼鏡屋。  八百屋。  判子屋。  あたしはそれらの店のシャッターを眺めながら、ほろ酔い気分で一人歩いてた。今考えると結構無用心だったかも。女ひとり、路地裏に連れ込まれる心配とかまったくしてなかったわけだから。  まあ、あの駅周辺は比較的治安もいいとは言われてるけどさ、絶対ではないでしょ?昔ながらのヤンキーとかもいるのかもしれないしね。  シャッターが降りたアーケード街を、あたしは適当に道を選んで歩いてた。寄り道、によって先輩が言っていたような不思議な出来事が起きたらいいな、なんてことを思いながら。  多分、先輩の言葉は本当だったんだと思う。  あたしは知らないうちに、何かによって道を選ばされていた。寄り道であって、最終目的地は駅であるはずなのに。気づいたら遠回りどころか、駅からどんどん遠ざかっちゃってたの。  それに気づいたのは、とある古着屋の前まで来たところだった。道の突き当りだったのね。全然見覚えのないシャッターと店名を見て、なんでこんなところにいるんだっけ、って思った。  で、なんとなくスマホでグーグルマップ呼び出したら、まーかなり駅から遠ざかってんのね。やっちゃったなーって思いつつ、あたしはそのシャッターに背を向けて駅に戻ろうとしたんだけど。  かりかり。  突然、後ろから変な音がして、ね?  それがなんていうか、引っ掻くような音なの。わかる?黒板を爪で引っ掻くみたいな、超絶気分が悪くなるあの音。  それが、すぐ後ろから聞こえてくるのね。  かりかり。  かりかり。  かりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかりかり――。 『な、なに?』  さすがに鳥肌が立って。  あたし、その古着屋のシャッターを振り返ったの。そしたら、ね?さっきまで完全に閉まってたシャッターの下部分が、ちょっとだけ開いてるのね?  で、その下から光が漏れ出してきてるの。――かりかり、ってひっかく音と、一緒に。  何かがシャッターから出てこようとしてるって、あたしはそう思った。同時に、古着屋さんの名前を見て、おかしいなって思ったの。  だってこのアーケード街、何度も来てる。なんなら先週の土曜日もうろうろした。ちょっと入り組んでるけどそんなに広いわけじゃない。なのに、あたしはその店の名前に見覚えがなかったのよ。  あたしは、一体何処に来てしまったんだろう。そう思ったら急に、きょ、恐怖で体が、う、動かくなってね?  逃げなきゃ、って思うのに何もできなくて。  シャッターがゆっくり、ゆっくり、ゆっくりと持ち上がっていってね。  そ、その下から、で、出てきたのは、で
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