ロードスターは恋をする

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「ロードスター?」 「ああ、ロードスターは北極星のことだ」 「っ、北極星?」 「北極星ってさ、いつも同じ場所にあるから、旅人の目印になったりするだろ。俺にとっての夏樹はそういう、道しるべみたいなものだから。デザイン画には書きこめてないけど……ほら、ここに星マーク彫ってある」  夏樹の指で光るそれを引き抜き、柊吾は内側に秘められた北極星を教えてくれた。  Nを表すねじれデザインの裏側に星印が刻まれている。 「すげー……しゅ、柊吾さん! あの、オレも!」 「ん?」 「オレ、柊吾さんが載ってる雑誌見た時、流れ星が落っこちてきたみたいだって思って、そんくらい衝撃的で。実際逢ったら中身までかっこよくて、優しくて……  柊吾さんと並んでも恥ずかしくないくらい、オレもかっこいい男になりたいって思うようになって。そしたら晴人さんが、夏樹にとって柊吾は北極星だねって」 「……マジか」  晴人にそう例えてもらったことを夏樹は大切に想っていた。  夏樹にとって柊吾は、流れ星であり北極星。  柊吾の存在がより強く輝きをもった気がしたのだ。  それと同じことを柊吾も自分に感じているなんて、奇跡じゃなかったら何だというのだろう。 「でもなんでオレが柊吾さんの道しるべ? オレ何もしとらん……」 「そんなことない、俺は夏樹に色んなことを教えられてる。叱られたのもそうだし、恋愛はふたりでするものって言ってたのもかなり効いた。  誰かを好きになったこともないのに、ひとりで勝手に夢見て、勝手に幻滅して……そういう情けないところがあったから。夏樹は俺のロードスターだ」 「うう、柊吾さん……」 「でも流れ星もいいな。俺にとっても、夏樹を初めて見た時そういう感覚あったかも」 「ええ、マジっすか? 全然そんな感じせんかったですけど。むしろオレがぐいぐい行っちゃって、困ってたっつうか……」 「ああ、オレが初めて夏樹を見たの、ここで会った時じゃないし」 「え……え!? どういう意味っすか!?」
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