168人が本棚に入れています
本棚に追加
/134ページ
「柊吾と言えば、まさかまたカメラの前に立つとは思わなかったよ。何度誘っても二度とやらないって言ってたのにね」
「オレも実はもうやらないんですかって聞いたことあるんすけど、同じこと言われました。でもカタログは相手役のモデルが見つからなかったんすよね。嫌なのに体張ってすげーって思いました」
「……アイツがそう言ったのかい?」
「…………? はい。撮影の時にそう聞きました」
「へえ……南くん。こっち」
早川に手招かれ、夏樹は素直に顔を寄せる。
すると驚きの事実が耳打ちされ、夏樹はつい大声をあげてしまった。
スタッフの人たちが何事かとこちらを見て、慌てて口を手で押さえる。
「え、マジっすか?」
「マジだよ。はは、何隠してんだか」
「オレ聞いてよかったんすかね」
「いいんだよ。モデル事務所社長の誘いを断り続けたんだから、このくらいのことは大目に見てもらわないと」
どこか少年のように笑う早川に夏樹も笑い返し、だがその実、心の中は大騒ぎの状態だ。
今すぐ柊吾に会いたい、早くあのマンションへ帰りたい。
だが今日はまだやることがあると、ぐっと堪える。
最初のコメントを投稿しよう!