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「あ、来た来た」
「へ……え!」
「キミ、南夏樹くん?」
「は、あ……え!? なんで!?」
「あは、おもしろ」
目の前の現実に、開いた口が塞がらない。
まさかの人物が突然現れて、自分の名前がその人の口から飛び出てくるなんて。
この状況で「はいそうです、どうもこんにちは」とすんなり答えられる人がいるのなら、是非お目にかかりたい。
「初めまして。俺は晴人」
「し、知ってます!」
「わお、ありがと。はい握手」
「ひえっ」
「ふーん……なるほど。確かにアイツの目に狂いはなさそうだな」
右から左から、夏樹より高いのにわざわざ背伸びしてまで上から、それからしゃがみこんで下からも。
挨拶も早々に素早い動きで夏樹を観察するその人――この事務所の看板である人気モデルの晴人はそうつぶやいた。
なるほどの意味も、“アイツ”が誰なのかも何も分からない。
言葉ひとつひとつの意味が、今の夏樹の頭ではちっともかみ砕けない。
「はいはい、こっち。中に入って」
「あっ、ふあい!」
「はは、ふあい」
晴人に手を引かれ、中へと足を踏み入れる。
事務所内はワンフロアで、デスクで仕事をしている人たちに会釈をしつつ奥へと進む。
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