手は届かない

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「めっちゃ美味しかった! 尊くん、ご馳走様です!」 「どういたしまして」  ショップが閉店を迎えた後、尊と外で夕食をとった。  そろそろ退勤だ、という頃に<今日は夕飯を食べて帰ることになった>と柊吾、それから晴人からも連絡があったのだ。  それを知った尊が誘ってくれて、ハンバーガーショップへと向かった。  チェーン店のものではないハンバーガーは、夏樹にとって目新しい。  つい瞳を輝かせると、尊はいつかみたいに「犬みたいだな」と笑った。  食事はもちろん、尊との時間も楽しかった。  ふにゃくまのキーホルダーに尊が目を留めたのでひとしきり語れば、俺は興味ないなんて言われたけれど。 「なるほどこれは夏樹のお気に入りだったんだな」と指先でトンと撫でてくれたりもした。  名残惜しさを覚えつつ、店を出たところで解散することになった。 「本当にひとりで帰れるか?」 「帰れるよ、もうこっち出てきて半年は経ったし!」 「それもそうか。でもま、気をつけてな」 「うん。尊くんも」 「おう。じゃあな」  手を振って別れた後、尊はすぐに電話をかけ始めた。  今夜は恋人の彼と会う予定らしい。  そんな日に誘ってもらったことを申し訳なく思ったのだが、それぞれ夕飯後の約束だったから助かった、と言われてしまった。  スマートな先輩に頭が上がらない。  さあ帰ろうか。  駅に向かって歩き出した夏樹を、けれどスマートフォンの通知が足止めさせる。  ポケットから取り出し、ロック画面を確認した夏樹の眉がきゅっと上がる。 「え、美奈さん?」  メッセージの送り主は、六月に撮影で一緒になった美奈だった。  連絡先の交換こそしたが、実際に送られてきたのは初めてだ。  社交辞令だったのかもと思ったんだよな、と既に懐かしく思いながらトーク画面を開くと、そこにあった文面に夏樹はそっと目を見開く。 <夏樹くん久しぶり! よかったら今から遊ばない?>
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