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大きく息を吐いて気を取り直し中へと進むと、エントランスがあり入場料として二千円が必要とのことだ。
払えないほどではないが、突然のことに少々懐は痛む。
それでも何か得られるのならば安いものだろう。
支払いが済んだところで美奈に着いたと連絡を入れ、中へと進む。
爆音の次に夏樹を刺激するのは、煌びやかな照明だ。
加えて、ごった返す若者たち。
踊る人たちがそこかしこに溢れていて、テレビでしか見たことのない世界に呆然とする。
頭に浮かぶ文字は、場違い。
ただそれだけだ。
許されるものならば、今すぐに帰りたい。
二千円は無駄になるが、お腹が痛くなったとでも言ってそうしてしまおうか。
そう思ったのだが、引き返すより先に美奈に見つかってしまった。
「夏樹くん!」
「あ、こんばんは!」
「ふふ、来てくれて嬉しい」
夏樹の腕に美奈の腕が絡まって、声が聞こえるようにと体をぐっと寄せられる。
途端に感じるのは香水の甘い香りと、アルコールの匂いだ。
もう酔っているのだろうか。
こんな場所では、モデルとしての教訓だとか、そう言った真剣な話が出来る気もしない。
完全に見誤った。
とは言え、そそくさと逃げ帰るわけにもいかないだろう。
美奈に腕を引かれるまま、夏樹は身を任せることしか出来ない。
「夏樹くん、何飲む?」
「えっと、じゃあ何かジュースを」
「え~? お酒飲まないの?」
「いやだってオレ、まだハタチになってないですし」
「ふふ、ちゃんとしてるんだね。偉いなあ。じゃあ……すみませーん、オレンジジュースひとつ」
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