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早川に深くお辞儀をした後、感極まった夏樹は両手を突き上げた。
やったー! とつい大きな声が出てしまえば、社内からは拍手とおめでとうの言葉たちが湧き上がる。
「あ……大声出してすみません、でもありがとうございます!」
「みんな南くんのことが大好きだからね」
「うう、オレも皆さん大好きっすー! オレ、頑張ります! でもやっぱ準備何も出来んのはそわそわするっすね」
「まあね。でも何も出来ないってこともないんじゃない?」
「え?」
「肌のコンディションを保つとか、そういう基本的なことは出来るはずだ」
「あ、確かに!」
柊吾からも常日頃言われていることのひとつだ。
それが活かせるのは嬉しいし、さすが柊吾だと何だか夏樹まで鼻高々になる。
今日からはより一層肌のケアに励もうと決意する。
ぬるくなったコーヒーを甘くして飲んで、しばらくの雑談の後、あまり長居するのもよくないだろうと立ち上がる。
だが早川が夏樹を呼び止めた。
「南くん、この後用事なかったらお昼一緒にどうかな」
「へ……いいんですか?」
「もちろん。お寿司は好き?」
「っ、好きっす! 高級ランチだ……」
「はは、そうだね」
社長は昨夜もお寿司でしたよね? と先ほど帰社した前田が笑っている。
フランクな雰囲気のこの事務所が好きだ。
事務所の外へ出る間際、夏樹は振り返り社内を見渡した。
身に余るほどの環境が整っている、あとは自分の努力次第だと思い知らされる。
何よりもまずは、今日聞かされたばかりのカタログ撮影だ。
指名での仕事は初めてで、自ずと力が入っている。
必ず成功させるのだと意気ごみながら、早川と共に事務所を後にした。
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