地球は卵で出来ている

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 あまりにも丸くて、地球儀に見えてきた。  ぺろっとシャツを捲り肉割れ線をなぞる。  指先がおヘソに着地する。  繋がってる。この裏側から電線のように。  おヘソ周りを恐る恐る指で散策する。  温めるようにカーブに手を添わせる。  そう、卵が割れないように、そっと包むように。  お腹の中でどんどん育つ私の卵。  羊水というプールでぐるぐる回ってる。  ドクンドクン  命の振動を皮膚を通して受け止める。  私の下腹部にある狭い部屋で、手を伸ばしたり欠伸をしたり。    苦しくないだろうか。  窮屈じゃないだろうか。  途端に震えて泣きたくなって独り笑った。  腫れた瞼の隙間で太陽が赤く燃えていた。  港が見える丘公園からのぞむ海に、大きな船が佇むように停泊している。  ぼうっとしてたら、数時間も経ってたんだ。  ずっと同じこと繰り返してる。  吸って吐いて泣いて。吸って吐いて泣いて。  ヒーヒーフーヒーヒーフー  ベンチの前を通る人もぐるぐる回ってる。  家族、友達同士、恋人同士、家族、友達、恋人同士。  みんな地球を囲むように円く手を繋いでるのに、私だけ。  絶望に寄り添うのは赤いヒマワリみたいな夕陽だけ。  どうして地球儀みたいなお腹して地球のどん底にいるの?  どうすればいいの?  何千回も繰り返した。  ごめんね。ごめんね。  お腹に謝る。 「おかあさん……お……かあさ……ん……うわあーーわあーー」  天国のお母さん、膝の間に顔を埋めたいのに自分のお腹でつかえて潜れないよ。  怖いよ怖いよ。  公園のトイレにへその緒付いたままの赤ちゃん放置とか。  たまに聞くニュース。  ナンテヒドイコト。  ドウシテソンナトコロデ。  ヒニンシテナカッタノカヨ。
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