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「たけのこをぬかを入れてゆがくでしょ。それから半分は炊き込みご飯にしてたけのこおにぎり、もう半分は味付けして煮るから。」
美鈴はてきぱき仕事をこなしながら、説明する。これは……手慣れている。手慣れすぎているとまつりは思う。たけのこの季節なんて限られているのに、この迷いない動き。何年鍛錬を積んだのだ。
こんな技を隠していたとは、美鈴、そりゃ結婚も決まるわけだよ。
「あとは、さっきたれに付け込んだ照り焼きチキンと、いろどりにゆでたまごときぬさや。どう?」
「い、いいね。私、なにすればいい?」
「じゃあ、きぬさやの筋取って。今朝、うちの庭から採ってきたきぬさやだよ。」
み、美鈴よ、きぬさやまで育てているのか。恐れ入ったよ、参りました。
おぼつかない手つきできぬさやを手にしたまつりに、美鈴は
「こうやって。反対側も。ね、筋取れるでしょ。」
とレクチャーする。
内心、えー、こんなめんどうなことしなくちゃ食べられないの? こんなにちっちゃいのに、と思っている早瀬川まつり。
そこへ
「早瀬川さん、結婚しちゃうってほんとうなんですか……?」
と声が聞こえた。
いたのか、長久保!!
と思っている女子ふたり。
考えてみれば、長久保はいた。さっき青白い顔して入ってきて、そのままソファに横たわっていた。こっちは明日の弁当づくりで忙しかったから、すっかり存在を忘れていた。
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