義叔父

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  目を開けると、木目のある茶色の天井が見えた。和室によくある四角いシーリングライトもある。窓が開け放たれているのか、紐がゆらゆら揺れている。    あのアパートの白い天井ではない。 「あっ……」  僕は敷布団に寝かせられてた。畳の匂いが鼻腔をくすぐる。まるで森林浴をしているような、ほっと安らぐ匂いだ。  着ていた服は綿(めん)のパジャマに変わっていた。思わず頬擦りしてしまいそうなほどの柔らかさだ。このパジャマからは花の優しい甘い匂いがする。  この(とろ)けるような微睡(まどろみ)は心地よかった。それにしても、ここはどこだろうか。 「ここはどこだ!?」  はっと我に返り、がばりと上体を起こした。あの時のような吐き気はもう無い。体は軽かった。 「ここは俺の家だよ」 また頭の上から声が降ってきた。 「驚いたかな?」  駅で聞いた、しっとりした声だ。恐る恐る顔を上げると、白髪混じりの端正な顔の男がいた。鼈甲(べっこう)色の細縁のメガネをかけている。そのレンズの奥で目が水晶のように輝いていた。 「ありがとうございます」  気を失って見ず知らずの人間に介抱された経験がないので、正直どんな反応をすれば分からない。お礼しか言えない自分が少し恥ずかしかった。
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