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気がつけば季節はすっかり冬になり、年末が近づいても琴美さんは顔を見せることが無く、街はあっという間にクリスマスの雰囲気をまとい始めた。
木々のイルミネーションがキラキラと光り始め、スーパーやケーキ店ではクリスマスケーキの販売に力を入れ始めている。
そんな中でもTOMO's Bakeryはこれといったクリスマス仕様も無く、いつも通りの営業をしていた。
「何かもうちょっとさぁ、クリスマスっぽいものとか作らないの?」
そうこぼしたのは最近は専ら洸太くんと2人でランチを食べに来ることが多くなった優人くんだった。冬のランチメニューとして取り入れたシチューセットが気に入ったらしく、最近は毎日のように足を運んでいる。
優人くんの呟きにも動じることなく素っ気無く答えることにした。
「ケーキ売るだけの余裕も無いし、クリスマスっぽい装飾品も持ってないのよね。街中クリスマスの雰囲気出てるし十分でしょ」
「えー。友香さんの作るケーキ食べたかったな……」
肩を落とす優人くんに洸太くんが何やら耳元で話し始める。だけど私の元まではその声は聞こえないので気にせず2人のランチを仕上げる。
BLTサンドとクリームシチューを二人の前に並べると、優人くんが笑顔で口を開く。
「ね、ね、友香さんにお願いというか、提案なんだけど。2週間後の金曜夜にクリスマスパーティ的なことやろうと思うんだけど、友香さんの店使えないかな」
え? クリスマスパーティ……って何やるの? 首を傾げていると、洸太くんが口添えた。
「ただみんなでお酒飲んで盛り上がろうってだけなんだけど、友香さんの店って夜は閉めちゃうでしょ。その時間使わせてもらえないかなーって。で、可能であればちょっとした料理とか出してもらえると嬉しいんだけど……」
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