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20. 膨らむ想い
―― side : SONODA
美香に頼まれるがままに飲み物を買って病室に戻ろうとすると、正面から友香さんが向かってくるのが見えた。電話か何かかな……そう思ったのは一瞬で、友香さんの悲しそうな表情を見て、美香に何か言われたんだ、そう感じた。
今思えばお茶はベッドサイドの冷蔵庫に何本か入っていたはず。わざわざ買ってきてなんて、まるで自分を遠ざけようとしているみたいだ。何で気付かなかったんだろう。
「どうしたの?」笑顔で問いかけてみたものの、友香さんは何も言わずに横を素通りしていった。
後ろから追いかけてきたであろう小関くんもそのまま通り過ぎようとしたので、腕を掴んで引き留めた。
「何かあったのか?」
そう聞くと、仕方なくといった感じで病室での経緯を話してくれた。数日前、友香さんが会いに来ると美香に言った時呟いていた言葉を思い出した。
『これでようやく修ちゃんのこと返してあげられるね』
あの時は意味が分からなくて聞き間違いかなと思いスルーしていたんだけど、ちゃんと問いただしておけばよかったんだ。今更後悔しても仕方がない。
「園田先生、知ってたんじゃないですか、美香さんがそんな風に考えてたってこと。その上で友香さんと引き合わせようとしたんですか? 友香さんが首を縦に振ってくれるかも、そんな風に考えてたわけじゃないですよね」
小関くんの怒りはもっともだ。友香も傷ついたであろうことは容易に想像できる。
「そんなことは思ってないよ。友香さんが怒ってくれて安堵してる。俺はただ純粋に友香さんを美香に会わせたかっただけなんだ、このまま会わずにいるのは良くないと思ったから。まさか友香さんにそんな事を言うとは思ってなかった。美香には俺から話しておくから、友香さんには申し訳なかったと伝えておいてくれ」
それだけ言うと手を離し、足早に病室へと戻った。部屋に入ると美香はベッドから外を眺めていた。
「美香、何で友香さんにあんなこと言ったの?」
怒りというよりは哀しみを込めてそう言うと、美香は笑っていた。
「聞いたんだ。お姉ちゃんったら、あんなに怒らなくてもいいのに。ホント頑固な子よね」
悪いのは自分ではなく友香さんだ、そう言っているように聞こえる。
「美香、君がどういうつもりでそんなこと言ったのかは分からないけど、仮にそんな形で友香さんと付き合えたとして俺はちっとも嬉しくなんかない。それだけは忘れないでいてほしい」
それを聞いた美香は「2人とも頑固なんだから……」そう呟くと俺が買ってきたお茶を一口飲み、「なんだか疲れちゃったから休むね」とだけ言って横になった。
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