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私が声を荒げても美香は一向に堪えていない。
「でも、修ちゃんに再会したときどう感じた? やっぱり素敵だなって思ったでしょ? それにお姉ちゃん今も独りなんでしょ。修ちゃんのこと忘れられないでいる、だったらいいじゃない。意固地にならないで、幸せになりなよ」
1度ついた火はそう簡単には消せない。口調がヒートアップしているのが自分でも分かったけど、止められない。
「忘れられてないなんて私一言も言ってないよね。独りだなんて勝手に決めないでよ。今私が幸せじゃないなんて、勝手に決めつけないでよ!」
私のきつい言葉にも美香は軽く笑ってから応戦した。
「じゃあ紹介してよ、お姉ちゃんのお付き合いしてる人。できるものなら……ね」
まるでそんな人いるはずない、そんな口ぶりだ。いや、それは間違っていないんだけど……私は咄嗟にすぐ隣りにある腕を掴んで引き寄せた。
「何言ってるの。さっき紹介したじゃない。ね?」
優人くんはあまりにも急な展開に驚いていたみたいだけど、自分の腕を掴む私の手の震えに気付いたのか、腕を握る私の手を逆の手で優しく包み込んだ。
「小関君、だっけ? お姉ちゃんの言ってること、本当なの?」
「はい、本当ですよ。まだ付き合ってから日は浅いんですけど、自分から告白して了承していただきました」
そう言って私の肩を軽く抱き寄せた。そんな姿を見た美香は釈然としない表情を浮かべる。
「なるほど。嘘じゃないってことは分かったわ。でも、まだ付き合ったばっかりで、小関君から言い出したことなんでしょ? だったら考え直して貰えないかな。お姉ちゃんは修ちゃんのこと心から想ってるのよ」
あまりにも自分勝手すぎる言葉に、もう耐えられなかった。
「昔から自分勝手なことばっかりしてる美香に私のことなんて何一つ分かるわけない。もういい加減にして。……やっぱり会いになんて来なければよかった」
それだけ言い放って部屋の外へ飛び出した。このまま帰ろう、そう思って出口へ向かうと、正面から園田くんが歩いてくるのが目に入った。
「どうしたの?」
笑顔で問いかけられたのにもかかわらず、私はそのまま園田くんの横をすり抜けて出口へと向かった。
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