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30. 孤独からの救い
美香との別れを終えて、落ち着いたらまた同じ生活に戻すつもりだった。というかお店を放っておくわけにはいかないからすぐにでも店を再開させなければと思っていた。大学が春休みの間はそこまで焦らくてもいいかもしれないけど、大学生がお客さんの大部分を占めているだけに、学校が始まるまでには再開させたい、そう思っていた。
だけど美香のお葬式で再会した叔母さんに声をかけられて、そろそろ店を始めようかと思っていると言われた。でも叔母さんは私がやっている時も実は何度か様子を見に来てくれていて、想像以上にしっかりとやってくれていることに驚き感謝してくれていた。
「友香ちゃんさえ良ければあのお店はそのまま渡すのもありかなと思ってるんだけど。また別の場所見つけるし」
そんな事を言われたけど、私は叔母さんにあの店を返すことを決めた。あのお店自体は好きだったし楽しかったけど、あくまで叔母さんのやりたいことに合わせて作り上げていたものなので、自分のやりたいこととは少し違うかなとも思っていたのだ。
だからすぐに店の引き継ぎを始めた。いずれ叔母さんにこの店は引き渡すことを前提としていたので、仕入れのお店やこれまでのお客さんについての情報は逐一まとめていた。だから引き継ぎは滞りなくすぐに終わらせることができた。
この街や人は好きだったけど、叔母さんと競合したくはないし、1から始めるなら新天地にしようと思ったので住んでいた部屋も一度引き払うことにした。しばらくはゆっくり休もうと、ドイツにいた時お世話になったオーナーに会いに行く約束も取り付けた。私が日本でパン屋を始めたと聞いてずっと話を聞きたい、会いに来てよと言ってくれていたから。それにずっと自分の作ったパンばかりを食べていたので、久しぶりにオーナーの作ったパンが食べたいなと思っていたのだ。
そんな感じで過ごしていたものだから、新しいお店を始めるまでに半年ほどかかってしまった。新しいお店は人の少ない山間部を選んだ。この場所を選んだのは、水が美味しいのと近くにいい農場があり、そこで作られている牛乳やバターが気に入ったから。作っているのは私とほとんど歳の変わらない女性だった。一気に意気投合して、私のために毎日必要なものを届けてくれることを約束もしてくれた。
ただ、ここは近くに幼稚園や小学校はあるけど、1学年が20人もいないくらいの規模。前と同じような形態のパン屋を開いてもそこまでの集客は見込めないので、通信販売をメインにすることにした。
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