13. クリスマスの再会

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13. クリスマスの再会

 あの一件があってから、琴美さんは私の店に顔を出さなくなった。藤里さんと話し合ったときに私が余計な口出しをしたことを聞かされたんだろうか。やっぱりお節介だったかな、と落ち込んでもいた。  そんな琴美さんの現状については優人くんが教えてくれた。藤里さんが琴美さんに会いに来て急に別れを切り出したらしい。理由は自分が既婚者だから。別れたくない琴美さんはそれでも構わないからこのまま付き合いたいと言ったらしいんだけど、それは無理だって言われたらしい。理由は…… 『別れないと友香さんから奥さんにバラされる、そう脅されたから』  とのことだった。私そんな事までは言ってないのに。っていうか私藤里さんの奥さん面識も何も無いんだけどな。藤里さんは、とにかく私のせいにしたかったらしい。そうすることで自分の非を少しでも軽くしたかったのかもしれない。  やっぱり、2人の中では私が悪者なんだよね……  優人くんは私はあくまで琴美さんのためを思って藤里さんに話をしたんだろうし、そんな脅すようなことは言わないはずだって擁護してくれた上で、真偽を確かめるために私の所に来てくれた。  私は藤里さんとのやり取りを説明して、琴美さんにもちゃんと本当の事を話してもらったんだけど、あまり信じてくれていないらしい。藤里さんの言う事を信じるのは当然か。 「やっぱり余計なお節介だったかな。琴美さんの幸せ奪うみたいなことしちゃったんだもんね……」  そんなことを呟くと、横で聞いていた香織さんは堂々と言い放った。 「友香さんは悪くないです、悪いのはその男一択ですよ。むしろ大事(おおごと)になる前にけじめつけられたんだから感謝して欲しいくらいだと思いますけどね。っていうか、話し合いの中で友香さんの名前出すなんて酷くないですか? 自分が最低なことしておいて友香さんに責任押し付けるなんて女々しいったらない」  香織さんがそう言って怒ってくれただけでも気持ちは軽くなる。だけど……そうは言っても2人が別れるきっかけを作ったのが私であることには変わりがないのだ。恨まれても仕方のない状況ではある。私がそう言ってため息をつくと香織さんはさらに続ける。 「私だったら付き合ってる相手が結婚してたなんて知ったらこっちから振ってやりますよ。でもって友香さんには感謝すると思いますけどね。そんなことで人生狂わされたくないですから」  相変わらず香織さんの物言いはさばさばしている。そんな香織さんに少し慰められつつも、やはり琴美さんのことは心配になる。だけどこれ以上はどうすることもできなかった。
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