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料理? それって夜営業するって事?
「いや、うちはパン屋だよ。そんな大層なもの準備できないし、お酒だって……」
消極的な私とは対象的に、優人くんと洸太くんはすっかり盛り上がっている。
「キャンブの時に作ってくれたローストビーフとか、ランチで出してるサラダとシチューとパンとか。あと……できればケーキとか? あ、イベントのときのシュークリーム、あれも美味しかったから、それでもいいけど。お酒は持ち込みにするからさ、駄目かな。ちゃんと後片付けもするし」
2人が身を乗り出して「おねがい!」と私に向かって手を合わせている。そんなこと言われても……と困っていると、後ろから声がした。
「簡単なメニューでいいならいいんじゃないですか。面白そうだし僕も手伝いますよ」
ランチプレートの皿を洗っていた晴彦くんが会話に入ってきた。
いつも思う。こういうときになんで晴彦くんは彼らの味方につくんだろう。そうやって自分が楽しみたいだけなんじゃないかとも思ってしまう。
「晴彦くん、クリスマスなのに予定無いの?」
辛うじて反撃してみたけど、あっさりと「特に無いですよ、彼女だっていないですし。だからお手伝いでもそういうのがあれば喜んでやりますよ」と返された。そんな言葉を聞いていると、まあ頑なに拒否するほどじゃないんだよな……なんて考え始めてしまう。何より彼らの頼みはなんとなくだけど断りたくはないと思ってしまうのだ。
「う……ん。じゃあ人数だけ教えて。でも、あくまでここはパン屋なんだからあんまり期待はしないでよ。それと、本当にお酒は用意しないからね」
「やった! じゃあ諸々決まったらまた連絡するね!」
そう言って2人は早々にランチを食べ終えて店を出て行った。ランチタイムが終わり、皿を洗い始めると、晴彦くんが隣で皿を拭きながら口を開く。
「すみません、押し切っちゃって。でも、最近友香さん元気無さそうだったから。こういうのも気分転換になると思って」
元気無さそうだった? そんなつもりは無かったんだけどな。
「それと、こういう機会でも作れば立花さんも店に来てくれるんじゃないんですかね。あの2人もそのくらいは考えてると思いますよ」
思わず皿を洗う手を止めて晴彦くんの顔を見上げる。そっか、私と琴美さんの仲直り、そんなこと考えてくれてるとしたら。
「じゃあちょっとがんばろうかな。と言っても私のレパートリーでどこまでできるかだけどね」
そう言って気合を入れた。
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