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00. 序章
私は昔から妹のことが羨ましかった。そんな事を言うと妹は烈火の如く怒り出すのは目に見えているので口が裂けても本人には言えないけど。
妹はいつでも明るくて、笑顔の可愛い女の子だった。一方で双子と間違われるくらいそっくりだと言われる私はそんな事を言われることはなかった。私には明るく笑いながら過ごせるほど自由には生きられなかったから。
「友香はお姉ちゃんなんだから、妹の面倒はしっかり見るのよ」
「妹の見本になるように振る舞わなきゃ駄目よ」
母からそんなことばかりを言われ続けてきて我慢ばかりをしている中、妹は分かりやすく甘やかされていた。まあ下の子に甘くなるのはありがちなこと、そう思ってはいたんだけど、私の家族はとある事がきっかけで徹底して妹が中心に動くようになった。出かける場所も食べたいものも、なにもかも妹を中心にして物事は決まっていた。
きっかけは私が高校生の時。妹が急に倒れて病院に運ばれたのだ。検査の結果、心臓に疾患があると言われた。治療も難しく、あと5年生きられればいい、そんな話だった。妹はしばらく立ち直れずにいたのだけれど、ある時ようやく現実を受け入れたのか、1日でも長く悔いなく生きたいと言うようになった。その日を境に私たち家族は妹のためなら何でもする、そんな決心をしたのだ。
それ以降妹のどんな我儘も受け入れてきたけど、3年程前に私はどうしても受け入れられない妹の行動に我慢の限界を迎えて、妹から、家族の元から逃げ出した。そして現在、病気が発覚してから7年、いや、8年程が過ぎているけれど、幸いまだ悪い話は耳に入ってきていない。そんな中私は昔過ごした街に戻ってくることとなった。
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