彼女のポーチドエッグ

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「えっとね、他にもいろんな焼き方を頼めるんだよ。知ってる人しか頼んでこないけどね」 「あー、裏メニューってやつだね。コーラしか載ってないのに、『コーラフロートお願いしまーす』って言っても頼めるみたいなやつ」 「それそれ」  涼花はどこかでコーラフロートを頼んだことがあるのかもしれない。 「この卵のは、ほかに何ができるの? うーん? 他ってゆで卵とかぐらいしか思いつかない」 「ゆで卵とー、目玉焼きも両面焼きとか、蒸し焼きのベースドエッグとかあって……あとはポーチドエッグとか」 「ポーチドエッグ!」  涼花がちょっと目を見開いた。 「最近、食べてなかったかも。それ久しぶりに食べたいなぁ」 「店員さんに言えばできると思うよ」  と言いながら僕はお店の中を見渡した。混雑状況も確かめるためだった。  お店が忙しそうだったら、元系列店のバイト経験者として裏メニューを頼むのは忍びないからだ。  幸い朝5時ということもあって、お店は空いていた。いまなら大丈夫だろう。僕は年が近そうな女性店員に向かって手を挙げた。
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